2018年6月7日(木)
核兵器禁止条約 政府は署名 速やかに
スイス下院が決議
【ベルリン=伊藤寿庸】スイス国民議会(下院、200議席)は5日、連邦会議(政府)に対して、核兵器禁止条約への速やかな署名を求める決議を賛成99、反対87で可決しました。スイスは昨年7月の国連会議で、核兵器禁止条約に賛成しましたが、政府はこれまで同条約に署名していません。
決議案の賛成討論に立った社会民主党のカルロ・ソンマルガ議員は、政府がいまだに同条約に署名していないことは理解できないとして、条約が「核廃絶を求める世界の市民社会の素晴らしい運動」の成果であることを強調しました。
同議員は、1945年の広島と長崎での原爆投下によって20万人以上が死去したことや、ジュネーブに本部を置く赤十字国際委員会(ICRC)が、民間人に破滅的影響をもたらす核兵器使用は、ジュネーブ条約違反だと指摘していることを強調。欧州の中立国であるアイルランドとオーストリアがすでに署名(オーストリアは批准済み)していることをあげ、スイス政府が速やかに署名し、議会に批准を求めるべきだと述べました。
同議員は「条約のアプローチは、人道的な伝統、国際人道法の尊重・強化などスイスの核心的な価値と利益に合致する」と述べ、中立国、軍縮交渉で重要な役割を果たす国として、「核兵器禁止への新しい基準に対して誓約をおこなうべきだ」と主張しました。
答弁に立ったカシス外相(自由民主党)は、「核兵器のない世界という目標を支持している」としながらも、多くの核保有国が核兵器を安全保障ドクトリンに組み込んでいるもとで、核保有国に条約への調印を求めるのは困難だなどと主張し、決議案への反対を表明しました。