2018年6月5日(火)
激戦 新潟知事選
政策・大義語れない与党
安倍政治の矛盾極まる
横一線の大激戦が続く新潟県知事選(10日投票)。ここまで先行してきた自公候補の陣営は、どこの街頭演説でもビラでも「期日前投票」を前面に訴えています。
「実際に投票所に一緒に連れて行って、早く名前を書かせてしまう。論戦なんて関係ない。1月の沖縄の名護の市長選挙からの教訓。勝つためだ」
自民党新潟県議の一人は、論戦が深まる前に組織戦で逃げ切る戦術の意味をあからさまに語ります。
続けて同県議は、「政策も政治も語れず、本当の意味でなぜ花角(はなずみ)(候補)なのかを言えない」と行き詰まりを吐露します。安倍政治の矛盾が極まる状況です。
選挙では、東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非が最大争点です。また、立憲主義破壊とウソにまみれた安倍政治への審判でもあります。
自民、公明両党が支持する花角英世候補は、原発問題で米山隆一前知事の「事故検証なしの再稼働は認めない」等の路線「継承」を吹聴し、再稼働に“慎重ポーズ”で「争点つぶし」に躍起です。ところが、原発再稼働推進の安倍政権、自民、公明両党の支持を受けるうえ、花角氏自身も「国が原発をベースロード電源と考えていることは理解している」「当座は原発が必要」(5月23日の政策発表会見、新潟日報同27日付など)と表明しており、再稼働に慎重どころか推進です。
県内の元自民党首長は「花角氏が勝てば必ず再稼働になる。長期的に廃炉を目指す」と述べ、「突き詰めた議論をしたくないから期日前投票で決着を目指している」と苦笑。自民党県連幹部の一人は「この間の選挙で新潟の民意は出ている」と述べ、7割近い「再稼働反対」世論と政権のエネルギー政策との矛盾を認めます。
これに対し、現状での再稼働に反対し、「原発ゼロ」と安倍政治への審判を高く掲げ、市民と野党の共闘を力にまい進する池田ちかこ候補の大義と足場は明確です。2日には6野党会派の代表がそろって池田候補支援の街頭宣伝に立ちました。そこで日本共産党の志位和夫委員長は、安倍政権のエネルギー計画が、柏崎刈羽を含め全原発の再稼働を前提にしたものであることを厳しく告発。原発再稼働が最大の争点であり、これにきっぱり反対し、原発ゼロの新潟を主張している池田候補の勝利を訴えました。
「安倍農政」への怒り 徹底した自民の安倍隠し
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安倍政権への審判をめぐってはどうか。昨年7月の東京都議選で、森友・加計疑惑や共謀罪法強行への批判が爆発して自民党が大惨敗したことも意識し、新潟県連幹部は「影響は出る。だから出ないようにする」としますが、「対策」は徹底した自民・安倍隠しです。
自民県議の一人は「はっきり言って安倍首相の話はしたくない。県連でも、安倍政権の不祥事にほとんどの人があきれている。安倍首相が立派な宰相だと思っている人は一人もいない。安倍政治は語る材料にならない」と言います。ところが花角候補は、安倍首相を支える二階俊博幹事長が大臣時代に秘書官を務めた人物で、現在の選挙は二階派が主導。中央直結の動きに、地元自民党関係者からも危惧の声が出ているといいます。
農業者に変化
新潟は全国屈指の米どころ、大農業県です。いま県知事選をめぐり、従来自民党の支持基盤であった農業者の間で、かつてない変化が起きています。
「TPP(環太平洋連携協定)11」承認案の強行採決(5月18日)や、コメの生産調整政策「減反」と直接支払交付金の廃止、農協つぶしの「改革」など「安倍農政」に対する怒りが農業者の間で広がっています。県農政連は花角氏推薦を決めていますが、県内24ある地域の単位農協のうち七つの農協(農政連)が池田候補を推薦・支持(2日時点)。また県農政連の動きに反発して「自主投票」としたり、花角・池田候補双方に推薦を出すなどの動きも出ています。報道では、花角支持を明確にしているのは7農協(農政連)にとどまっています(新潟日報1日付)。
こうした動きの中で、県内のある農協幹部は「戸別所得補償の廃止やTPPの強行採決という安倍政権の農政に非常に不信感をもっている」と憤りをあらわにします。知事選の争点について「一丁目一番地は原発問題だ」と述べ、「万が一、原発事故が起きれば、新潟県の農業は破壊され、新潟のみならず広い地域が住めなくなる」と危惧します。また、森友・加計問題をめぐり「池田候補に入れた知人から『うそつき政権はダメだ』という声もあった」といいます。
別の農協幹部は、知事選では県の政策課題だけでなく、安倍農政が問われると指摘。「農政改革は農家・地域のためになっているのか。直接交付金の廃止で所得は大きく落ち込む。TPPでは、国内対策の実施を前提に、『影響がない』というが、ごまかしだ」と批判しました。
池田候補の勝利をステップに、市民と野党の共闘をさらに発展させることが問われます。2日の6野党会派代表の共同街宣は、16年県知事選のときの枠組みを超えて広がっています。自公連合に代わる政治の受け皿として、市民と野党の共闘が力を示すことが大きな課題でもあります。
前者の農協幹部は、野党が一致点で協力し、共通政策を明確に掲げてたたかう必要性を強調。「野党にいろいろな考え方はあるが、原発阻止、安倍政権退陣、憲法改正阻止など、基軸の政策を統一して連携することが必要だ。そうすることで国民の信頼は得られる」と、共通政策の発展を基礎に市民と野党の共闘が前進することへの期待を語りました。
執念と荒廃
自民党新潟県連幹部、県議らは述べます。「夏の総裁選、来年の地方選と参院選、場合によっては解散・総選挙のためにも『何が何でも野党連合に勝つ』というのが安倍政権と自民党本部の意思だ。次々と国会議員の応援が入るが、迷惑だ」
県内各地で花角候補の名前と「原発ゼロ」を連呼する覆面宣伝カーが走り、証紙を貼らなければ配布できないビラ(個人ビラ)が全戸配布されるなど、権力をカサにきた違法な選挙活動が強まっています。建設業界やその下請けに、露骨な花角支援の要請、締め付けの文書やメールが次々と送られています。自民党関係者によると、公明党も全国動員を強める一方、新潟での知り合いの名簿を出せと組織内に檄(げき)を飛ばしているといいます。
最後の最後まで新潟の未来と日本の政治の刷新をめぐる激烈なたたかいが続きます。(中川亮、中祖寅一)