2018年6月3日(日)
80歳被爆者 米学生と語る
小倉さん マサチューセッツ州で討論会
米北東部マサチューセッツ州の大学に在籍する日本の学生たちが5月19~21日、広島の被爆者、小倉桂子さん(平和のためのヒロシマ通訳者グループ代表)を招いて一般の学生も参加できる討論会を開きました。小倉さんは、国境を超えた次世代の若者に核兵器廃絶の意志を継いでほしいと呼び掛けました。(ボストン=遠藤誠二 写真も)
8歳で被爆した小倉さんは、英語を話す数少ない被爆者です。通訳を介さない証言は、質疑も入れて2時間にもおよびました。
米国での対話で率直に出される意見は、加害者、被害者の概念からくるものが少なくありません。今回も「日本人として米国を憎まないのか」との質問が出ました。
「憎んでいない」
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小倉さんは、「憎んではいません。原爆投下は時の指導者の判断で行われたものです」「広島を訪れ被爆者のために尽力した一般の米国人もいました」と答えました。
小倉さんは続けて説きます。「被爆者にとって核兵器が存在し続けることがおぞましい」
20日は、ハーバード大ケネディ行政大学院で午前と午後、2回にわたり討論会が開かれました。
同大学院生の約60人は今年3月に日本を訪問し、広島を訪れた際に平和記念資料館で小倉さんの証言を聞きました。
同大学院に留学中で討論会を企画した女性は、「今回、平和に関するイベントを企画し、ぜひ小倉さんに来てもらおうという話になり、短期間の準備で開催に至りました」と話します。
「私たちのいのちの対話 被爆者の声」と題した討論会は、3日間でハーバード大学とマサッチューセッツ工科大学、タフツ大学と米国を代表する大学で計5回開催されました。
片道15時間近くの空の旅、日本との時差は13時間と、80歳の小倉さんにとっては厳しい日程。それでも、将来、各分野で活躍するボストンの学生と会うのは「勇気を与えてくれる」と考え、訪米を決断しました。
「平和へ情熱を」
ハーバード大で学ぶ各国の学生に小倉さんは訴えました。
「私はいつか死ぬけど、世界を本当に平和にするため、情熱を持ち続けて」「生きることはとても大事なこと。あなたたちがいるそれぞれの国で、たたかってほしい」
アイルランド人のデビッド・カリネンさんはこう話しました。
「アイルランドでは反核世論がとても強く、私も核兵器が存在することに反対です。小倉さんの話はとても力強く、感動的です。第2次大戦の被害者である被爆者の寛容さは、紛争が絶えない今日の問題にも関係することです。いつか広島を訪れることが私の目標になりました」