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2018年5月13日(日)

明治大学特任教授(政治学) 纐纈厚さんに聞く

暴言幹部自衛官の軽い処分 民主主義と文民統制への無理解

 統合幕僚監部所属の幹部自衛官が、小西洋之参院議員(当時民進党)に「国益を損なう」などと暴言を吐いたことに対して、防衛省は、昇進に直接影響する懲戒処分に至らない訓戒処分としました(8日)。軍事史に詳しい纐纈厚明治大学特任教授(政治学)に聞きました。(若林明)


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 今回の「訓戒」という極めて軽い処分から、防衛省が今回の事件を軽微な問題として捉えていることが明らかとなりました。それが文民統制の根幹に関わる極めて重大かつ遺憾な問題という認識が全く欠落しているのです。

 今回の事案は3等空佐の個人の問題で、自衛隊組織に直接関わる事案でないとし、幕引きを図ろうとする姿勢が透けて見えます。国民の代表である国会議員は、まさに文民(シビリアン)の代表であり、その文民にどう喝まがいの言葉や不服従の姿勢を、行為であれ、言葉であれ表明することは、明らかに文民統制や文民優越の原則を否定するものです。武官である自衛隊員は、文官・文民に服従を誓っているはずです。それによって民主主義が毀損(きそん)されることを防いでいます。

 戦前、国家総動員法制定に関わる審議の途中、佐藤賢了中佐の「だまれ事件」(1938年3月)がありました。同法の危険性を説く帝国議会(現在の国会に相当)議員に向かってどう喝したのです。佐藤中佐へのとがめはなく、しばらくして大佐に昇進します。そこから軍国主義の時代に拍車がかかりました。そうした戦前の教訓を踏まえて、戦後、文民統制が編み出されたのです。

 防衛省が公表した文書や記者会見の内容は、このような文民統制の歴史を無視したものであって、その役割や機能がどこにあるか、全く理解していないとしか思えません。自衛隊組織が民主主義と共存していくために編み出された基本原則である文民統制が、このような形で内部から食い破られている現実を私たちはいま目のあたりにしています。こうした現状を大変に憂慮しています。

 防衛省及び自衛隊の今回の問題への姿勢は、民主主義自体を軽んじることになります。文民統制が十分機能してこそ、民主主義社会の充実が担保される、という認識を私たちはこの機会に深めていく必要があります。


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