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日本共産党

2018年5月5日(土)

NHK「生討論 どうなる憲法論議」 小池書記局長の発言

 日本共産党の小池晃書記局長は3日、NHKの「生討論 どうなる憲法論議」と題した討論番組に出演し、改憲について各党の代表と議論しました。

憲法を守らない政権に憲法を変える資格なし――政府・官僚は憲法に基づき自らを律するべきだ

 番組の冒頭で、憲法論議を進めることについて自民党の細田博之憲法改正推進本部長が「憲法改正論議を速やかに開始したい」と述べたことに野党から異論が噴出しました。

 小池氏は「与党はいまの政治のありようを深刻に反省した方がいい」と警告。公文書改ざんや国会での虚偽答弁の横行、自衛隊日報隠ぺいなど不祥事が相次いでいることを挙げ、「こういう政権に改憲を口にする資格があるのだろうか」と疑問を呈しました。

 さらに、安倍政権が特定秘密保護法や安保法制=戦争法、共謀罪など憲法違反の法案を次々と数の力で強行してきたことにふれ、「憲法を守らない政権に憲法を変える資格はない」と断じました。そのうえで小池氏は「いまやるべきことは現行憲法に基づいて自らを律し、正直でうそのない政治をすることだ。それが全ての土台になる」と述べました。

 立憲民主党の福山哲郎幹事長は「国会自身が政府とともに不信感をもたれている。まずこの問題を政府与党として責任をもって整理し、国民に説明をしていただきたい」と指摘。民進党の原口一博副代表は「憲法を議論する基礎が壊れている」と強調し、社民党の又市征治党首は「政治と行政に対する信頼を取り戻すために真相解明を徹底すべきだ」と主張しました。

憲法を変える必要は全くない――必要なのは憲法に基づく政治を行うこと

 改憲が必要なのかどうかについての議論で小池氏は、「いま変える必要は全くない」と指摘。安倍首相が9条に自衛隊を書き込むといった改憲をし、2020年に施行すると公言したことについて「憲法というのは国民の基本的人権を保障するために国家権力を縛るもの。改憲を時の首相が言いだしたということがそもそもの間違いだ」と強調しました。

 NHKの世論調査(4月13日から3日間の調査)で、改憲の「必要がある」が29%、「必要はない」が27%、「どちらともいえない」が39%でした。小池氏は、「国民の中で変えるべきかどうかは意見が拮抗(きっこう)している。圧倒的に憲法を変えるべきだというのが議論の前提だとすれば、その前提は存在しない」と指摘しました。

 また、朝日新聞や共同通信の世論調査で、安倍政権の下での改憲に約6割が反対していることをあげ、「国民は憲法をいま変えることを政治の最優先課題とは考えていない。いまの日本に必要なのは、憲法を変えることではなく政治を変えることだ。憲法に基づく政治を行うことがいまの政治の責任だ」と述べました。

 福山氏は「国民の強い要請に応じて国会が議論して発議するという順番であるべきなのに、権力を持つ側が改憲を自己目的化することが本当に健全な改憲議論だとは思えない」と話しました。

自衛隊を憲法に書き込めば自衛隊に9条2項が適用されなくなる――無制限の海外での武力行使が可能に

 具体的なテーマごとの議論で9条に関し、自民党がまとめた、「9条の2」を設けて「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず」とし、「そのための実力組織として」「自衛隊を保持する」とした条文案が紹介されました。

 小池氏は、自衛隊を憲法に明記してもいまある自衛隊を認めるだけで何も変わらないとする自民党の説明について、まったく違うと反論しました。「自衛の措置」には、集団的自衛権が入ると指摘し、「前条の規定は…自衛の措置をとることを妨げず」とすることで自衛隊に9条2項(戦力及び交戦権の否認)が適用されなくなると指摘。「こうなれば無制限の海外での武力行使が可能になる。今と違った自衛隊になっていく」と警鐘を鳴らしました。

 さらに、自民党が憲法に明記しようとしている自衛隊は、安保法制によって集団的自衛権を行使し、専守防衛を投げ捨て空母や長距離巡航ミサイルを持ち、「日報」を隠ぺいしてシビリアンコントロール(文民統制)のきかない自衛隊だと指摘。「そういった自衛隊を書き込むということは許されない。9条改憲の発議を許さない一点で市民と野党の共闘を広げていきたい」と表明しました。

 自由党の木戸口英司参院国対委員長は「安保法制は憲法9条に違反している。自衛隊を明記する案は国民の目をごまかすもの。安保法制を廃棄することから始めなければいけない」と述べました。

9条は誇るべき日本の財産――北東アジアの平和、協力、繁栄へ9条を生かした外交戦略を

 9条をオールに船をこいできたとのNHK解説者の指摘に、小池氏は、「9条ではなく、日米安保でこいできた。そこが問われている」とし、「9条があったから日本は戦死者を出していない。一人の外国人も戦場で殺していない。9条は誇るべき日本の財産だ」と強調しました。

 小池氏は、北朝鮮情勢で、南北首脳会談の板門店宣言で朝鮮戦争の終結や非核化という方向が打ち出されたことに「新しい動きが生まれてきている」とし、来る米朝首脳会談で非核化が進むことに期待を表明。そのうえで、日本に問われているのは自主的・自立的な外交戦略をしっかり持ち、憲法9条を生かした平和外交を21世紀の戦略としてもっていくことだと指摘し、「平和、協力、繁栄の北東アジアをつくっていく方向に向かって進むために憲法9条が、いまこの時代に新たな生命力を発揮するときだ」と主張しました。

安倍改憲は日本を守るためではない――海外での武力行使、米国の戦争に加わる危険が拡大

 司会者が、「わが国をめぐる安全保障環境が厳しさを増しているいまこそ改憲しなければならない」との視聴者の声を紹介し、受け止めを問いました。

 小池氏は「そういう心配をお持ちの方に申し上げたいのは、いま(安倍政権が改憲で)やろうとしていることは日本を守るためのこととは関係ないこと」と強調し、自衛隊を憲法に書き込めば、海外での武力行使の幅をいま以上にいっそう広げることになると指摘しました。

 さらに、日米軍事同盟が強化され、米軍と自衛隊の一体化が進んでいるなかで憲法9条を変えてしまったら、「対日要求を拒否できるのか」と疑問を投げかけました。

 小池氏は、「いままでは実際の戦闘に参加するところまではいかないということでやってきたが、安保法制で橋を渡し、このうえ憲法9条を変えてしまったら、まさにアメリカの戦争に加わる、そういう圧力が迫ってくるのではないか。そういうリスクもしっかり考えた上で日本の針路を考えなければいけない。それが政治の責任だ」と主張しました。

党利党略の解散には国民が選挙で審判を下す――疑惑隠し解散などは憲法論で議論する水準の話ではない

 解散権をどうするのかの議論で小池氏は、憲法7条に天皇の国事行為として「衆議院を解散すること」とあるのは内閣の助言と承認によるものだとして、「そもそも首相の専権事項ではない」と強調。そのうえで「内閣に解散権があるとする憲法解釈においても、それは無限定、無条件ではない。党利党略の道理のない解散は、選挙結果で有権者が審判を下せばいい。それが道理だ」と述べました。

 安倍政権が「森友加計問題」で追い詰められて昨年行った疑惑隠し解散について、小池氏は「まともに議会制民主主義を理解する政治家であれば、絶対にやってはならないことだ。自分のことしか考えていない安倍政治の異常さがここに出ている。これは憲法論で議論する水準の問題ではない話だ」と指摘しました。

教育無償化は憲法通りの政治をやることが問われている課題

 教育の無償化についての議論で小池氏は、憲法26条が「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」としていることを紹介し、「憲法は義務教育以外の教育の無償化も含めて要求している。問題はそれを実行できていない政治の責任だ」と強調しました。

 日本政府が高校や大学の段階的な無償化を求める国際人権規約を承認していることにもふれ、「立法措置、財政措置によって実現していくことが政府には問われている」と述べました。

 共同通信の世論調査で教育無償化のために改憲することに賛成が少なく、法律で実施できるので憲法「改正」の必要がないという回答が7割になっていることも紹介しつつ、「この分野は憲法を変えるのではなく、憲法どおりの政治を責任をもってやっていくということが問われている課題だ」と主張しました。

 番組の最後に細田氏が「現状でなんでもうまくいっているから、それでいいんだというふうに議論をすることは、民主主義や立憲主義からみて適当な議論じゃない」と述べたことに対し、小池氏は、「現状がうまくいっているとは言っていない。うまくいっていないのは政治の責任だと言っている。憲法のせいにしてはいけないと言っている」と反論しました。


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