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2018年4月22日(日)

辺野古地質報告書 防衛局「黒塗り」なぜ

活断層・軟弱地盤 隠しか

研究者ら「工事中止」求める

 国の天然記念物のジュゴンがすみ、遺伝的に特異なアオサンゴ群落など世界の生物多様性のホットスポットの一つとされる沖縄県名護市の辺野古崎・大浦湾で日米両政府が強行する新基地建設計画。3月に沖縄防衛局が公表した地質調査報告書には「黒塗り」部分がありました。その訳に迫ります。(山本眞直)


写真

(写真)沖縄防衛局が公表した地質調査報告書の不開示部分の「黒塗り」と、V字形滑走路、活断層の可能性が指摘されている二つの断層、その延長線が交わる「落ち込み」箇所を重ねた図版(土木技師の奥間政則氏作成)

 「黒塗り」で不開示となっているのは、大浦湾にせり出すC1護岸の東端付近です。

 護岸計画は県知事との協議が必要で、三つに再分割されているC護岸は、基礎構造に問題があり設計変更を迫られています。

 報告書は「C1~C3護岸計画付近には、当初想定されていないような特徴的な地形・地質が確認された」としています。

安定せず不適格

 なかでもC1護岸計画付近は「大きくへこむ谷地形が形成されており、非常に緩い・軟らかな堆積物である砂質土、粘性土が堆積している」と指摘されています。さらに地盤の強度を示すN値(数値が高いほど強い)が「N値ゼロを示すものも多い」とし、「当該地においては、構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須」と事実上の設計変更を示唆しています。大規模工事は「N値50以上」の地盤が常識だからです。

 C護岸計画は、海底に「捨て石」を投下して土台を作り、そこに巨大なケーソン護岸群(1基当たり約7400トン)を沈めます。

 しかしC護岸の計画海域は軟弱地盤に加え沖に向けて急激に傾斜しており、土木技師の奥間政則氏は「捨て石の土台が不安定で、不向き」と指摘します。

 C護岸に沿うように陸と海には「活断層の可能性」が指摘されている二つの断層が走り、その延長線の交わる箇所の「落ち込み」は「黒塗り」ポイントと接近しています。

 沖縄防衛局は「黒塗り」について、「公にすることで、国が行う事業の適正な遂行に支障をおよぼす恐れがある」と説明。「事業とは何か」との本紙の問いに「調査が未完のポイントで現在、再調査について検討中」としました。

調査内容公表を

 米軍資料をもとに大浦湾の複雑な地形と地質を指摘してきた目崎茂和元琉球大学教授(理学博士)は、「活断層の可能性が指摘されている断層によるとみられる海底の『落ち込み』部分の音波探査の生データや、C1護岸を含むすべての埋め立て護岸計画にそった地盤の地質データと具体的な地質断面図を公表すべきだ」といいます。

 「活断層の可能性」を本紙(2017年9月24日付)でいち早く指摘した加藤祐三琉球大学名誉教授(岩石学)は「C1護岸の海底地盤が厚さ40メートルもの“豆腐”のようなずぶずぶの地質と報告されているが、V字形滑走路予定地下の地質も同様な可能性がある。『黒塗り』は地質データを隠したまま強行突破を図りたい意思の表れ。工事は中止すべきだ」と批判します。

 沖縄県は活断層や軟弱地盤などの調査データの公表と工事の中止を求める「声明」を日米両政府と関係機関に送付しています。


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