2018年4月13日(金)
主張
自衛隊イラク日報
「戦場の真実」隠し許されない
自衛隊のイラク派兵に関する日報が1年以上隠蔽(いんぺい)されていたことなどが連日のように問題になっています。強大な軍事力を持つ組織が重要な情報を隠し、国会や国民を欺いてきたことは極めて深刻かつ危険な事態です。軍事組織をコントロールできない安倍晋三政権の責任が改めて問われています。イラク派兵の日報がなぜ隠されたのか―。徹底究明が必要です。
組織ぐるみの様相に
イラク派兵の日報をめぐっては、昨年2月20日の衆院予算委員会で稲田朋美防衛相(当時)が、野党議員の質問に「イラクに関しては日報は残っていないことを確認している」と断言していました。
ところが、小野寺五典防衛相は今月2日、陸上自衛隊のイラク派兵部隊の日報が陸自研究本部(現・教育訓練研究本部)などにあったと発表しました。防衛省は昨年2月20日時点では日報のあった研究本部などを調べておらず、稲田氏の答弁は明白な虚偽答弁でした。
小野寺氏は4日には、研究本部が日報の存在を昨年3月27日に把握していたものの、稲田氏に報告していなかったことを明らかにしました。日本共産党の井上哲士議員は10日の参院外交防衛委員会で、昨年3月27日にイラク派兵の日報に関する情報公開請求があったのに対し、研究本部は30日に「存在しない」と回答していたことを明らかにしました。組織的な隠蔽の疑いが濃厚です。
日本共産党の仁比聡平議員は9日の参院決算委員会で、自衛隊が隠そうとしたのはイラクの「戦場の真実」だと追及しました。
自衛隊のイラク派兵は、「人道復興支援」などを口実に米軍の侵略戦争を支援するため強行された戦地派兵でした。自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限るというのが建前でしたが、実際は「純然たる軍事作戦」(陸自文書「イラク復興支援活動行動史」2008年5月)という他ないものでした。
イラク・サマワの陸自宿営地にはロケット弾などによる攻撃が少なくとも14回23発に及びました。派兵開始当時、陸自トップの陸上幕僚長だった先崎一氏は「対テロ戦が実際に行われている地域への派遣」であり、「約10個近く棺(ひつぎ)を準備」したと証言しています(NHKインタビュー、14年4月16日放送)。派兵部隊は事前に「至近距離射撃訓練を重視して実施」しました(前出の「行動史」)。
空自のC130輸送機は米兵輸送などのためバグダッド上空では、携帯ミサイルによる攻撃の危険に対し命がけの回避行動が必要だったとされています。当時の久間章生防衛相は空自の活動について「一歩間違うと本当に人命に影響する」「刃(やいば)の上で仕事をしているようなもの」と答弁しています(07年6月5日、参院外交防衛委)。
しかし、小野寺氏が6日に明らかにした空自の日報はわずか3日分・3枚しか出ていません。
稲田氏らの証人喚問を
昨年、大問題になった陸自の南スーダンPKO(国連平和維持活動)の日報隠蔽は、国会での議論などを通し、「戦闘」の現実をごまかす狙いがあったことが浮き彫りになっています。イラク派兵の日報隠蔽も憲法違反の実態隠しが本質です。真相の徹底解明のため、稲田氏ら関係者の国会での証人喚問が不可欠です。