2018年4月6日(金)
主張
自衛隊日報隠ぺい
こんな組織 憲法に明記できぬ
イラクに派兵された陸上自衛隊の日報が「あった」とされる問題で、陸自で見つかったのは実は1年以上も前だったことを小野寺五典防衛相が認めました。長期にわたって大臣などにも報告せず、国会答弁も訂正せず欺いていたというのは、「文民統制」(シビリアンコントロール)にも関わる重大問題です。情報隠ぺいや公文書改ざんが相次ぐ安倍晋三政権の強権体質に加え、ことは自衛隊という実力組織についての問題です。首相は自衛隊を憲法に明記する改憲を企てていますが、こんな自衛隊を憲法に書き込めばそれこそ暴走の歯止めがなくなります。
実力組織の暴走許さぬ
「戦争の放棄」「戦力の不保持」などを明記した憲法9条や「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と記した66条に基づく「文民統制」の原則は、戦前の日本が軍部の暴走と政府がそれを抑えきれなかったため、戦争への道に突き進んだ教訓から生まれたものです。憲法は国会を「国権の最高機関」(41条)とも定めています。その後の軍拡路線や組織改編で「制服組」の発言権が強まるなど、原則は脅かされてきましたが、「文民統制」そのものは政府も否定しません。
2日の記者会見でイラクに派兵された陸自の日報が今年1月に見つかったとのべた小野寺防衛相が、4日夕改めて記者会見し、前々日の説明を否定、陸自の研究本部で昨年3月に見つかっており、当時の稲田朋美防衛相などには報告されていなかったと発表したのは衝撃です。当時、「見つけることができませんでした」と答えた稲田氏の国会答弁もその間訂正されませんでした。陸自を統括する陸幕から自衛隊を統合運用する統幕を経て、小野寺防衛相に報告されたのは今年3月末だといいます。
イラク派兵の日報が見つかった昨年3月は南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派遣された自衛隊の日報が隠ぺいされていたことが発覚し、国会で大問題になっていた最中です。南スーダンPKOの日報隠ぺいでは昨年3月17日から特別防衛監察が始まります(7月に報告)。イラク派兵の日報を発見しても報告しなかった陸自の思惑はわかっていませんが、問題の拡大を懸念して意図的に隠ぺいしたとすれば極めて重大です。文字通り実力組織の暴走です。
もともとこの問題では陸幕、統幕から小野寺防衛相への報告が3カ月近くもかかった遅れも問題になっています。少なくとも文民統制が機能せず、「文官」である稲田元防衛相や小野寺防衛相が自衛隊を掌握できていなかったとすれば深刻です。その結果、誤った国会答弁を1年以上訂正せず、国会と国民を欺き続けたのは議会制民主主義を破壊する許すことのできない暴挙です。稲田氏らの国会への喚問とともに、実力組織をコントロールできない安倍政権の責任追及が不可欠です。
安倍改憲を許さない
安倍首相は憲法に自衛隊を明記する改憲に固執し、自民党に「自衛」のための「実力組織」として「自衛隊を保持する」という案をまとめさせ、国会での改憲発議を狙っています。自衛隊を明記し、お墨付きを与えれば、いよいよ歯止めがかからなくなります。
実力組織の暴走を許さないためにも安倍改憲の阻止が重要です。