2018年3月22日(木)
みなし仮設 延長不許可相次ぐ
どこに行けばいいのか
熊本地震2年を前に
熊本地震から2年を迎えるのを前に、熊本県内の民間賃貸住宅を借り上げた“みなし仮設住宅”の被災者が「入居期限」を理由に退去を迫られる事態が起きています。1年間の入居延長を希望する被災者も多く、県や熊本市の対応に不満の声が上がっています。(丹田智之)
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熊本市中央区の赤星征暉さん(74)は、自宅の借家が半壊し、みなし仮設住宅として提供された公務員住宅に住んでいます。話し相手がいない孤独を感じながら日々を過ごしてきました。そんな中、4月末で借り上げ期間が終了することを市から告知されました。
赤星さんは「年金収入は少なく、家賃が高い賃貸アパートには住めません。住み慣れた地域の市営住宅に入居を希望していますが、空室がありません。市からは『延長はできない』と言われている。どこに行けばいいのか」と困り果てています。
国はプレハブ仮設住宅の耐用年数(2年)に合わせ、みなし仮設の入居期間を「原則2年」としています。延長の可否は、県と政令市の熊本市が判断しますが、延長を希望しても認められないケースが相次いでいます。
高齢・病気・障害
入居期限が迫った被災者は「まだ災害公営住宅の入居が始まっていないのに期限を切るのか」「延長が認められても1年後のことを考えたら気持ちが焦る」と不安を募らせています。
みなし仮設住宅で生活する被災者の中には、高齢や病気、障害などの事情を抱えた人も少なくありません。
熊本市では、延長対象となる「やむを得ない事情」として、▽工期の関係で自宅の再建が間に合わない▽みなし仮設住宅より安い家賃の物件が見つからない▽災害公営住宅の建設が間に合わない―など八つの条件を提示。4月末までの入居期限後も引き続き住みたいと希望している581世帯に所得証明の提出などを求め、このうち66世帯を期限延長の対象外としました。
熊本市が昨年末に実施した「住まいの再建に向けた意向確認」調査では、回答世帯数の6割にあたる5487世帯が「延長を希望する」と答えています。
このうち自宅の再建を目指している世帯の87・7%が「期間内の再建が困難」として延長を希望し、民間賃貸住宅での生活を検討している世帯の43・8%が「高齢者・障害者世帯等で、かつ低所得世帯で、低家賃の物件が見つからない」と答えています。
取り下げた人も
延長を希望していながら“条件に合致しない”などの理由を市から指摘されて取り下げた被災者も少なくありません。
市の担当課長は「職員が一人ひとりに電話で確認しましたが、快く退去に応じた人はいなかった。建設型(プレハブ仮設など)に入居する被災者にも期限を通知していますが、追い出すようなことはしない」と述べています。
学生らと仮設住宅でボランティア活動を続ける熊本学園大学の高林秀明教授は「東日本大震災の被災地では2年の入居期間を無条件で3年に延長するなどして対応し、最初の1年の延長で条件を設けた例はありません。県は被災者の立場で政府と協議したのか。被災者の生活の厳しさや健康状態を踏まえたら、無理をさせて自助努力を求めることはやめるべきだ」と指摘します。
県は4、5月中に入居期限を迎えて延長を希望する熊本市以外の715世帯のうち17世帯に対し、延長を認めない通知を出しています。6月には建設型仮設住宅の期限を迎える中で「被災者に寄り添う」(蒲島郁夫知事)姿勢が厳しく問われています。