2018年3月9日(金)
主張
「いずも」とF35B
「攻撃型空母」保有検討やめよ
安倍晋三政権の下で、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改修し、最新鋭のF35Bステルス戦闘機の運用を可能にすることを視野に入れた調査・研究が行われていることが明らかになり、大きな問題となっています。F35Bは精密誘導爆弾などによる対地攻撃を主任務の一つにしており、「いずも」を「攻撃型空母」にすることを想定した重大な動きです。政府はこれまで、他国に攻撃的な脅威を与える兵器を持つことは憲法の趣旨に反するとの見解を示してきました。安倍政権は、「攻撃型空母」の保有に向けた検討を直ちに中止すべきです。
防衛相が初めて認める
問題となっているのは、「DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の航空機運用能力向上に係る調査研究」です。海自が、「いずも」を建造したジャパンマリンユナイテッド社に委託・実施しています。DDHのうち、空母のように艦首から艦尾まで続く全通甲板を持つ「いずも」型と「ひゅうが」型について、現在運用しているヘリコプターではなく、「新種航空機を運用するために必要な機能・性能を検討、評価する」のが目的です。
海自は、「いずも」型(全長248メートル)と「ひゅうが」型(同197メートル)を2隻ずつ保有しています。
小野寺五典防衛相は、日本共産党の小池晃書記局長の質問に対し、「いずも」型と「ひゅうが」型が「どの程度の拡張性を有しているのか、最新の航空機のうちどのようなものが離発着可能なのか」などを調査しており、「新種航空機」として短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bが対象になっていることを初めて明らかにしました(2日の参院予算委員会)。
首相も「(『いずも』などの)拡張性についてさまざまな検討を行うことは当然だ。危機が生じてからさまざまな装備を導入しようというのはまさに泥縄式」だと述べ、事実上、「いずも」へのF35Bの搭載を検討していることを認めました。いずれも、F35Bを導入し、「いずも」での運用を視野に入れて「攻撃型空母」への改修を検討しているとのメディアの報道を裏付ける重大な答弁です。
看過できないのは、小野寺防衛相が、今年1月に米軍佐世保基地(長崎県)に配備され、F35Bを実際に運用している強襲揚陸艦ワスプについて「憲法に抵触するような攻撃型空母に該当するか否かについては、その時々の国際情勢を踏まえる必要がある」と述べ、憲法上保有できないと明言しなかったことです。全通甲板を持つワスプの全長は253メートルで、「いずも」とほぼ同じです。
政府は、「攻撃型ではない空母」として「対潜ヘリコプターを搭載し、海上を哨戒することを主たる目的とする艦船」を挙げています(1988年10月20日、参院内閣委員会、日吉章防衛庁防衛局長=当時)。これに照らせば、対地攻撃が主任務のF35Bを運用できるように「いずも」を改修することは、まさに憲法違反の「攻撃型空母」への変ぼうに他なりません。
米軍も戦闘行動で使用
そうなれば安保法制=戦争法の下で米軍のF35Bが戦闘作戦行動で使用することもできます。憲法9条改悪をはじめ、米軍と一体となって制約のない海外での武力行使を可能にしようとする安倍政権の暴走を許してはなりません。