2018年2月14日(水)
アベノミクス5年 広がる格差
大株主上位300人 資産2.7倍に
「家なき労働者」の一方で
安倍晋三政権がすすめる経済政策、アベノミクスのもとで貧富の格差が拡大しています。上場企業の株式の時価総額が急増する一方、働く貧困層が増加しています。(清水渡)
上場企業の大株主、上位300人が保有する株式の時価総額は、第2次安倍晋三政権が発足した2012年末には9兆2129億円でした。17年末には25兆2191億円へと2・7倍に急増しました。アベノミクスの一環として、「異次元の金融緩和」がすすめられ、円安・株高が加速したためです。
17年末に保有する株式の時価総額がもっとも多かったのはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長です。孫氏は12年の7275億円から、17年は2兆4220億円と3・3倍に増やしました。加えて16年度は119億円の配当を受けています。
格差拡大を当然視
上位15人のうち、この5年で保有総額を率としてもっとも伸ばしたのは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」などを運営するスタートトゥデイの前澤友作社長です。前澤氏の保有する株式の時価総額は12年の417億円から17年には4049億円へと9・7倍に急増しました。株式からの配当も16年度に27億円になります。
17年度の保有株式時価総額が1兆2708億円と3位に位置する柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、「将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく」「仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」(13年4月23日付「朝日」)と格差拡大と低賃金化を当然視していました。
貧困世帯が増加
実際、大株主が株高で大もうけする一方で、貧困世帯が増加しています。日本銀行に事務局を置く金融広報中央委員会の「世帯の金融行動に関するアンケート調査」から推計すると、金融資産を持たない世帯は12年の1347万世帯から17年は1748万世帯へと400万世帯も増加しました。
東京都の調査によると住居を失い、インターネットカフェなどに寝泊まりしながら生活する人は都内に1日あたり4000人いると推計されます。そのうち3000人が派遣労働者や契約社員、パート・アルバイトなど不安定就労者とみられます。住居喪失者の62・8%が住居確保に当たっての問題点として「入居に必要な初期費用の貯蓄」をあげ、33・3%が「住居入居後に家賃を払い続けられる安定収入がない」と答えています。低賃金・不安定雇用が人間らしい暮らしを奪っているのです。
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