2018年2月4日(日)
米、核戦力強化へ大転換
新型巡航ミサイルを開発
核兵器廃絶の流れに逆行
【ワシントン=池田晋】トランプ米政権は2日、核政策の今後の指針となる「核態勢の見直し」(NPR)を公表しました。核兵器の役割を低下させ、核軍縮を進めるとしたオバマ前政権の方針を転換し、低爆発力の核弾頭や新型核巡航ミサイルの開発によって、核戦力の強化・近代化を進める方針を示しました。核兵器禁止条約が国連で採択されるなど、世界が核兵器廃絶を目指す中、それに真っ向から逆らうものといえます。
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NPR策定は、オバマ政権下の2010年以来。前回策定時から安全保障上の脅威が進化・多様化したことを理由に「核なき世界」の構想は消え、ロシアと中国、北朝鮮、イランそれぞれに応じた「核抑止力」が必要だと強調しました。
前戦略に引き続き、米国や同盟国の「死活的利益を防衛する極限状況でのみ核使用を検討する」との表現は残したものの、「極限状況」に、米国や同盟国の市民、インフラ、核戦力、その指揮・統制・警戒システムなどに対する「非核兵器による重大な戦略攻撃」も含まれると明記。通常兵器による攻撃やサイバー攻撃を受けた場合の核報復を排除せず、使用条件を事実上拡大しました。
新たな能力・任務を持つ核弾頭を開発しないとしてきた方針も転換し、潜水艦発射弾道ミサイルに搭載する核弾頭を低爆発力のものに更新する方針を明記。また、前戦略で退役させるとしていた海洋発射巡航ミサイルの能力を回復すべく、新型の核巡航ミサイルの開発を追求すると表明しています。
被爆者・平和団体が抗議
トランプ米政権が2日に出した新たな核戦略に対して、被爆者や反核・平和団体から一斉に抗議・批判の声が上がりました。
広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長は、「世界の核兵器廃絶めざす動きに水を差すものであり、直ちに中止すべきだ」と抗議。大小問わずすべての核兵器廃絶をめざす市民社会の運動を広げると語りました。
長崎原爆被災者協議会の田中重光会長は、「核兵器廃絶の流れに逆行する蛮行」と強調。新戦略を評価した日本政府に対しても「国連に提出した核兵器廃絶を求める決議がうそっぱちだと証明したようなものだ」と批判しました。
原水爆禁止日本協議会の安井正和事務局長は、国際的連帯でトランプ政権による逆流を打ち破ろうと強調し、「『ヒバクシャ国際署名』を世界数億という目標で集め、核兵器廃絶を求める圧倒的世論をつくろう」と呼びかけています。