違法調査、廃棄・謝罪まで
大阪市労連弁護団事務局長 北本修二さん
橋下徹大阪市長が実施した市職員への「アンケート調査」は、連合大阪法曹団や労働弁護団、民主法律協会など大阪の法律家8団体が呼びかけた5日の「2条例案にノー 大阪『維新』を考えるつどい」でも、強い批判があがりました。
橋下市長は「うみを出し切る」などと言って、働くものの自由を侵害する露骨なアンケートをあえて強行してきました。市長が「本当のことを言わなければ処分する」と職員を脅すようなものは絶対いけない。日本で有数の自治体の大阪市が憲法に違反し、そんな人権侵害のアンケートを強制すること自体、許されないことです。
恐怖心を与え
さらに、橋下氏自身が弁護士資格を持ち、野村修也弁護士を市の特別顧問に任命し、すすめてきたことで「法律家がやっているから根拠がある」という誤解を国民に与える。これがまたよくない。
職員アンケートでは、特定の政治家を応援する活動や、時間外であれば問題がない紹介カードの配布の有無まで問うています。
職員がどの政治家や政党を支持するかは自由です。「維新の会」でも、共産党でも、自民党でも、民主党でもいいのですが、誰のために動いたか、しかも処分をちらつかせて聞くことではありません。
こうした質問に回答せよと命じられたことで、職員に「組合活動に参加すれば、市長からにらまれる」と恐怖心を与えています。
市労働組合連合会(市労連・連合加盟)は2月13日、府労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てました。
働く者の連帯
府労委は9日後の22日、委員会の判断がでるまでアンケート調査の続行を差し止める実効確保の措置を決定し、橋下市長に勧告しました。
市は、アンケートは野村氏らの「第三者調査チーム」がやったことだと事実をねじ曲げた主張をしました。さらに野村氏が〝凍結〟を表明したから、「実効確保の措置は必要ない」と強弁しましたが、府労委は市の責任で凍結せよと言っています。市の逃げ口上を明確に退けたのです。
アンケートを廃棄すると言っていますが、ただ廃棄をして終わりではありません。これは違法であったということをはっきりさせる必要があります。
私たちが申し立てたのは、廃棄とポストノーティス(謝罪文の掲示)です。橋下市長は野村氏の判断で廃棄をしたら、もう不当労働行為を救済する必要はないと言うでしょう。
こうした違法なやり方を許すことは、公務員だけでなく民間にも影響を及ぼします。「思想信条の自由の侵害は許さない」と働く者の連帯が必要です。
聞き手・写真 北野ひろみ( 2012年3月15日付)