しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年9月12日(木)

主張

軍民共同研究加速

軍産学一体化への危険な動き

 防衛省が、大学や公的研究機関、民間企業を本格的な軍事研究に取り込む動きを加速しています。同省は米国のように軍産学一体で研究開発を進める体制の構築を狙っています。自民・公明政権が「安保3文書」に基づいて推進する「戦争国家づくり」の重大な一環です。

■新たな研究所設置

 防衛省は10月、防衛装備庁に「防衛イノベーション技術研究所」を新設します。同庁には既に「航空」「陸上」「艦艇」「次世代」の装備研究所があります。新研究所の設置は「画期的な装備品や防衛上の機能を他国に先駆けて実現する研究開発体制を抜本的に強化する」ためで、将来の戦い方を大きく変える装備・機能を開発する「ブレークスルー(現状突破)研究」に取り組みます。最先端技術を活用した軍拡競争をさらに推し進めるものです。

 新研究所の最大の特徴は民間の研究力や人材の活用です。約100人のスタッフのうち半数を民間から募集。ブレークスルー研究の事業設計や管理を担う「プログラムマネージャ」に企業の代表取締役や大学の研究所長、国立研究機関の研究員ら11人を登用します。

 ブレークスルー研究の予算は24年度で102億円、25年度は252億円を概算要求しています。100人規模の研究所としては破格の扱いで、巨額の研究資金を使って研究者らを引き込むのが狙いです。

 新研究所は「将来の防衛力の資」となる基礎研究を民間から応募する「安全保障技術研究推進制度」も担います。15年度に始まった同制度の24年度予算は104億円。応募は全体で203件と前年度の1・7倍、大学の応募も44件と2倍近くになりました。うち採択されたのは25件で、1件当たりの平均配分額は4億1600万円になります。

 一方、今月6日、15の学会連合と250の学会が連名で、公募型の科学研究費助成事業(科研費)を倍増するよう求める要望書を文部科学相に提出しました。大学への運営費交付金の削減などによる研究費不足が深刻化する中、科研費は10年以上横ばいだからです。科研費は毎年2万件以上が採択されていますが、1件当たりの平均配分額は250万円程度にすぎません。

 これに対し、防衛省の研究開発費は安保3文書の決定を受けて急増し、24年度は8225億円と10年前の6倍となっています。

■科学技術ゆがめる

 防衛省が8月2日、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」に提出した資料は、米国では軍の研究機関、巨大な軍事産業、大学・研究機関、シンクタンクなどが密接に連携しつつ高度な研究開発を進めているが、日本では防衛装備庁と企業の一部門にすぎない軍事産業が研究開発を行っている状況だとし、日本でも米国と同じようなシステムをつくる必要性を強調しています。10月発足の新研究所もその一環で、実際、米国で軍産学一体の研究開発を推進している国防高等研究計画局(DARPA)をモデルにしています。

 日本学術会議は「軍事目的の研究を行わない」声明を3度にわたり採択しています。日本の科学技術の発展を軍事偏重にゆがめる動きを許してはなりません。


pageup