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2024年7月24日(水)

主張

性別変更の要件

性自認尊重へ法律の見直しを

 戸籍上の性別を変更する際の要件をめぐり、人権尊重の流れをさらに前に進める司法判断が出されました。性器の外観を変える手術をせずに性別の変更を求めた家事審判で、西日本の高裁が変更を認めました。

■手術要件を見直し

 性別変更にあたり、「性同一性障害特例法」(特例法)は二つの要件で事実上手術を強いてきました。生殖不能要件(卵巣や精巣がないか、その機能を永続的に欠く)と外観要件(変更後の性別の性器に似た外観を備える)です。

 申立人は戸籍上の性別を男性から女性に変更することを求め、手術を受けていないが、長年のホルモン治療で要件は満たすと主張してきました。手術を必須とすることは過度な負担を強い、幸福追求権を定めた憲法13条に違反すると訴えていました。

 この審判で最高裁大法廷は昨年10月、生殖不能要件の規定は憲法13条に違反し無効としました。外観要件については、高裁では検討されていないとして審理を差し戻していました。

 差し戻し審で高裁は、申立人について「継続的なホルモン療法で女性化が認められている」とし、外観要件を満たすと判断しました。外観要件について手術を必須とするなら「過剰な制約を課すものとして、違憲の疑いがある」と指摘しました。

 二つの司法判断は、性別変更を断念するか、手術を甘受するか、の過酷な二者択一を迫る特例法の要件の違憲性を明確にし、体にメスを入れることなく性別を変更できる道を開きました。人権尊重の流れが司法と社会を確実に動かしています。

■相次ぐ司法の判断

 特例法は、このほかに▽18歳以上▽現在、結婚していない▽未成年の子がいない―の要件を課していますが、これらも司法判断で見直しが求められています。

 最高裁は6月、性別変更した女性が自身の凍結精子を用いて同性のパートナーとの間にもうけた子どもについて、法的な父子関係を認めました。

 法的性別が女性であることを理由に認知が妨げられると、養育や相続を受ける法的地位が得られないなど「子の福祉及び利益に反する」ことを理由にあげました。「未成年の子がいないこと」を要件とする特例法の規定は、子の福祉に対する配慮であり、父子関係を認めない根拠にならないと判断しました。

 「結婚していない」という要件は、夫妻の一方が戸籍上の性別を変更した場合、同性婚状態になり、現行法は同性婚を認めていないためです。しかし、いま、同性カップルの結婚を認めない現行制度を違憲とする司法判断が相次いでおり、「結婚していない」ことを求める正当性はなくなっています。

 特例法の施行(2004年7月)から20年が経過しました。性別変更の要件は、司法判断によって見直しが迫られています。医学的知見の進展と国際的な人権規範の発展の中で、性自認のありようは、病気や障害として扱う「病理モデル」から、本人の性自認のあり方を重視し尊重する「人権モデル」へと移行しています。その流れに沿った見直しが必要です。


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