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2024年6月23日(日)

主張

国立大学の学費

学生の声を聞き 値上げやめよ

 東京大学が年間授業料を約54万円から約64万円に引き上げる検討をしていることを明らかにしたのに続き、広島大学など各地の国立大学で値上げを検討する動きが相次いでいます。

■「学ぶ権利守れ」

 こうした動きに、東京大学など学生による学費値上げ反対の声が急速に広がっています。「東大にとどまらない、国公立と私立すべての大学の問題」という声が上がっています。

 「高等教育を受ける機会を閉ざさないために、学費を値下げし、学費の低廉化を」―東大生らが行った国会内集会での訴えです。東京大学教養学部自治会が実施した学生投票では「値上げ検討のとりやめを求める」に86%が賛成しています。同自治会が行ったアンケートでも、9割の学生が値上げに「反対」と回答。理由のトップは「経済的困窮者が大学教育から疎外されるから」です。

 物価高騰の下での値上げは苦しい家計をさらに追い込みます。地方出身者や、「女性は大学に行く必要はない」という偏見・差別にいまださらされている女子学生など社会的に立場の弱い人に、特に深刻な影響を与えます。私大受験をする経済的余裕のない家庭から進学の機会を奪いかねません。学生たちは“値上げは経済格差を拡大し、多様性をうたう大学の理念に反する”と訴えています。

 東京大学は、「もし値上げをする場合には、経済的困難を抱える学生への配慮は不可欠」として、値上げとセットで授業料免除の拡充などを挙げています。

 しかし、これにも学生たちは批判的です。大学の支援が受けられるかどうかは入学後に申請しないと分からないため、経済的理由から進学をためらう“未来の学生”の不安はぬぐえません。経済的理由以外で家庭から支援を受けず、学費を自分で払う学生や大学院生には支援が届きません。

 現在支援を受けている学生は「生活のためアルバイトで勉強に専念できないのに成績が悪いと支援が打ち切られる」「値上げしても支援を増やせばいい、ではない」と声を上げています。

 学生たちは、一方的に値上げの検討を進める大学の姿勢も批判します。“学生に関わる決定に学生が参加する権利がある”との主張は、大学自治の理念にのっとった当然のものです。

 こうした学生たちの“国際人権規約や憲法の求める教育を受ける権利を保障し、開かれた大学をつくるため値上げに反対する”との主張には道理があります。教職員の中でも賛同が広がっています。

 21日の藤井輝夫東大総長と学生の「総長対話」で学生たちは疑問や問題を指摘しました。当局は学生の声に真摯(しんし)に向き合い、値上げをやめるべきです。

■政治が責任はたせ

 同時に、政治の責任が問われています。自民党は国立大の基盤的経費である運営費交付金を削減し続けてきました。文部科学省の審議会では国立大授業料の値上げ大合唱が起き、自民党が「適正な授業料の設定」を求める提言を出すなど値上げ圧力を強めています。

 大軍拡をやめ、高等教育予算を抜本的に増やすべきです。憲法にも学生の願いにも背を向ける政治の姿勢を大本から変える時です。


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