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2024年6月14日(金)

きょうの潮流

 黒人の助産師がとりあげた赤子。羊水にぬれて光っている。それを、小さな木の窓から見守る子どもたち―。ひとつの生命の誕生、荘厳さと喜びをとらえた写真がその後の道を開きました▼「たった一枚の写真こそが、人間の一生の中でも最も重要な瞬間のドラマを、表現できる」。60年代に留学生として渡米した吉田ルイ子さん。ニューヨークで見た写真展で、フォトジャーナリストになることを決心しました▼ブラック・イズ・ビューティフルの輝きや差別を映しとった「ハーレムの熱い日々」。返還時の沖縄やベトナム戦争、中米の革命やアパルトヘイトの南アフリカ…。吉田さんのカメラは、戦場や貧困の悲惨ではなく、そこで生活する女性や子どもたちに向けられました。希望を見いだすように▼「シャッターを押す前に、被写体になる人とコミュニケートすること。写真を撮ることだけが目的じゃなく、そこの人びとと気持ちを共有していることを感じられたらいい」。自身の心構えを本紙で▼人間への尽きない好奇心と愛情。その存在を脅かす動きには、ひとりの人間としてあらがいつづけました。つねに立場の弱い者や少数者への共感を抱き、人間の尊厳や誇りを信じながら▼美しく年を重ねてきた女性を紹介した写真集『華齢な女たち』。深みのある表情から生き方が浮かびあがります。その作品は、21世紀を生きる女性へのメッセージだと話していた吉田さん。89歳で亡くなった彼女の写真もまた、生きてきた道を映しています。


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