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2024年6月12日(水)

主張

改悪入管法の施行

命と人権を守る世論と運動を

 外国人の人権侵害を拡大し命を危険にさらす改悪入管法(出入国管理及び難民認定法)が10日、全面施行されました。岸田文雄政権が2023年に採決を強行したこの法律は、名古屋入管で亡くなったウィシュマさん事件をきっかけに廃案に追い込まれた21年の改悪案とほぼ同じです。

 入管行政と難民認定審査を大本から見直す運動と世論をさらに強める必要があります。

 改悪法は、難民認定申請中は送還が停止される規定に例外を設け、申請中でも強制送還を可能にします。

■強制送還を容易に

 送還忌避罪などを設け、生命の危険など母国に帰れない事情を抱えた外国人の送還を容易にします。迫害を受ける恐れがある国への追放・送還を禁じた難民条約のノン・ルフールマン原則に反します。

 現状でも入管庁は、送還忌避者と一方的に決めつけ「送還ノルマ」を決めて強制送還しています。仮放免中は働くことを許さず、深刻な生活苦によって帰国せざるを得ない状況に追い込んでいます。

 そもそも、日本の難民認定制度には重大な問題があります。難民認定者数が極めて少なく、難民審査参与員の一部は「送還ありき」で審査数をこなしています。審査に弁護士の立ち会いも録音録画も認めていません。世界で当たり前の透明性・公平性からかけ離れています。独立した難民等保護委員会を設置し、出入国管理と難民保護の機関を分離することが必須です。

 改悪法では、入管収容に代わり「監理人」の下で生活できるとされました。これは支援者に監視の役目を負わせようとするもので外国人の保護とは相反します。一方、監理人になる人がいなければ収容されるのが前提で、収容期間に上限のない非人間的な扱いが続く懸念は消えません。支援の現場と連帯し人権侵害や医療体制に対する監視を強めることが極めて重要です。

 子どもの権利侵害も深刻です。子どもに在留資格を与えず仮放免状態に置き、▽健康保険が適用されず医療が受けられない▽日本で育っているのに送還する―など、子どもの権利条約に違反しています。

 入管庁は、日本で生まれた就学中の子どもに在留特別許可を与える「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針」を出しました。しかし、▽幼いころ日本に来た▽18歳以上、などは対象外としています。在留特別許可の付与数を国会でも明らかにせず、方針通り運用されているか不明です。子どもの最善の利益のために、線引きせず、子どもと家族に今すぐ在留特別許可を出すべきです。

■新たな改悪許さず

 さらに今国会では、税や社会保険料の未払いなどを理由に永住者資格を取り消す入管法改悪法案が審議されています。永住者資格は在留期限や就労制限がなく最も安定した在留資格です。永住者資格取り消し制度は、外国人の地位を著しく不安定にする差別的な改悪です。入管行政の底深い人権侵害の構造を強化するものです。

 日本で生きる外国人の人権を保障するため、新たな入管法改悪を許してはなりません。


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