しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年6月11日(火)

きょうの潮流

 インドの叙事詩ラーマーヤナの主人公ラーマは、インドで人気の高い神様です。孫悟空のモデルとされる猿神ハヌマーンの助けで悪魔の王を滅ぼします▼世界最多の人口14億人を抱えるインドの総選挙で問題になったのが、ヒンズー教の神ラーマの人気を利用した選挙運動の是非でした▼モディ首相は選挙直前の1月、北部アヨディアで「ラーマ神生誕地寺院」の落成式を盛大に挙行しました。11日間の断食で身を清め、神像を安置し、平伏する姿は全国に中継されました。ただその敷地は、32年前にイスラム教のモスク(礼拝所)を現与党インド人民党につながる暴徒が破壊した場所です▼インドとパキスタンが英植民地から分離独立した際、宗教暴動で多くの血が流れました。その経験からインドは宗教の違いで国民を差別しない政教分離の憲法を制定しました▼特定宗教へのテコ入れは憲法に反すると野党は落成式を欠席。するとモディ氏は「ラーマ神に敵意を持っている」と野党を攻撃しました。イスラム教徒を「侵入者」と呼ぶヘイト演説も。庶民が直面する失業、物価高、農村の苦境から焦点をそらす狙いだったのか▼選挙結果は、インド人民党の単独過半数割れ。神がかりと分断の選挙運動に国民は惑わされませんでした。野党は共闘組織をつくって臨み、議席を大きく伸ばし与党を追いつめました。訴えたのは「憲法にうたわれたインドの理念を守る」。薄氷の勝利で9日、3期目の首相に就任したモディ氏に問われる重い課題です。


pageup