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2024年6月6日(木)

主張

エネルギー基本計画

世界の常識にかなう方向を

 金融・経済情報の有力な通信社ブルームバーグは「犬が日本の石炭火力の撤退計画を食べた」という記事を載せました(5月2日)。子どもに宿題のことを聞くと「犬が食べちゃった」と答えたという小話に例えたもので、岸田文雄政権の石炭火力発電延命のGX(グリーントランスフォーメーション)に強い不信を示したものです。

 政府は先月、エネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画の改定作業に着手しました。

 現行の計画(2021年閣議決定)は、原発を「重要なベースロード電源」としつつ「可能な限り原発依存度を低減する」としています。ところが岸田首相は22年、国民に問わないまま、原発を「最大限活用する」という方針へ急転換。23年には新増設や老朽原発の60年超の運転を可能にすることを盛り込んだ「GX推進戦略」を閣議決定し、エネルギー基本計画に反映させようとしています。

 世界有数の地震国・津波国である日本で原発を稼働する危険性を、東京電力福島第1原発事故で国民は痛感しています。元日の能登半島地震では、道路の寸断、建物の倒壊で屋内退避を含む避難計画が崩壊したばかりです。原発ゼロこそ目指すべき方向です。

■脱炭素を掲げるが

 政府のGX推進戦略は「脱炭素」を掲げながら、原発活用と並んでアンモニアと石炭の混焼の推進をあげています。これは石炭火力延命につながるものです。

 二酸化炭素などの温室効果ガス排出の抜本的削減は待ったなしです。頻発する気候災害はじめ、世界でのビジネスや将来の世代の安全と生活を決定的に左右します。産業革命前に比べて地球の平均気温の上昇を1・5度以内に抑えるために温室効果ガスの排出を一刻も早く削減してゼロを目指すのが世界の「常識」です。

 ところが政府は、アンモニア混焼や、製造・発電で排出された二酸化炭素を回収し地中に貯留する技術(CCS)を将来的に導入するとして石炭火力を維持し続けようとしています。CCSは技術的にも経済性でも効果が疑問視されています。これではますます世界から立ち遅れます。

■最も安い再生エネ

 再生可能エネルギーの発電コストは電源の中でも最も安いというのも、世界の常識です。原発再稼働や原発事故の後始末のコストを含み、円安のもとで石炭やウランなどの輸入燃料への依存を前提にする日本の電気料金は、家計や企業経営を圧迫します。

 日本は、来年2月までに2035年時点での温室効果ガスの排出削減目標を国連に提出する必要があり、今回の基本計画改定はその裏付けともなるものです。

 政府は改定で40年度の目標を決めるといいますが、こんな姿勢では国の内外から「グリーンウォッシュ」(見せかけの環境対策)、「課題の先送り」と非難を浴びるだけです。

 太陽光発電でも、森林を犠牲にするメガソーラーではなく建物の屋根や未利用地、農業でのソーラーシェアリングなどやれることはたくさんあります。思い切った省エネと再生可能エネルギー導入で原発ゼロ・脱炭素の日本を実現する必要があります。


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