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2024年6月5日(水)

主張

定額減税の問題点

選挙目当てで複雑・不公平に

 政府が今月から実施する定額減税で自治体や企業が膨大な負担に悲鳴をあげています。給与明細への減税額記載の義務付けだけではなく、減税と給付金が一体になっているうえ、1人4万円の減税の内訳が所得税と住民税に分かれているなど仕組みが非常に複雑なためです。選挙目当て・政権浮揚のために始めた制度の矛盾が噴出しています。

 増税イメージを払拭したい岸田文雄首相が持ち出したのが1回限りの定額減税でした。しかし低所得で所得税非課税の人には恩恵がないため、「物価対策」として低所得者には1世帯10万円などの給付をし、所得税・住民税の納税額が4万円より少ない人には減税しきれない分を1万円単位で「調整給付」することになり減税と給付が混じることになりました。

 そのため、いま地方自治体は、税務署から住民の2023年の所得税納税額や扶養家族の情報をもらい、調整給付の対象者を推定し、給付額を計算、対象者に確認書を送るなどの事務に追われています。計算ミスなどを招く恐れがあります。国民に一律4万円を給付すれば、はるかにシンプルで、今年初めには実施できていました。

■6月実施で負担増

 今回、減税対象となる所得税額は本来、24年末に確定します。しかし、首相の念頭にあったとされる6月の解散・総選挙に合わせるため、23年の所得をもとに減税・調整給付額を推定して実施されます。また、現行税制では所得税と住民税で税額確定の時期が異なるなどのため、仕組みがより複雑化し、さらなる自治体負担や不公平が生じることになりました。

 例えば、23年に納税していた人が今年、失業や退職などで課税されなくなると、低所得者向け給付も所得税の定額減税も受けられません。そこで政府は、そうした場合、今年末の所得確定を待って追加的に減税分を給付するとしました。それらの人は来年春に確定申告しないと給付を受け取れません。自治体にも新たな事務負担が生じます。

 定額減税と給付が二重に受けられるなども起こります。その場合は返さなくていいとされ、所得1千万円超の人で配偶者の所得が48万円以下の人は住民税減税が2回受けられることも判明しています。

■論戦と運動成果も

 企業負担も膨大です。ある零細業者は給与システム改修などで数十万円かかったといい、賃上げを阻害しかねません。年末調整で一括して減税すれば負担が減りますが、政府は6月からやらないと「労働基準法違反になる」と脅しをかけて6月実施を迫っています。

 自営業やフリーランスでは当初、配偶者や親族の従業員が定額減税の対象から外れていました。日本共産党の田村貴昭衆院議員、小池晃参院議員の追及や全商連などの運動で、政府は来春の確定申告後に調整給付をすると答弁。国会質問と運動の大きな成果です。

 今回、一番低所得の世帯への給付が、それより収入の多い世帯に比べて少ない事例も起きます。物価高騰対策というなら消費税減税と低所得者への手厚い支援こそ必要です。一体この定額減税は何のためなのか。政権の姿勢が問われます。


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