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2024年6月4日(火)

きょうの潮流

 戦争で愛する家族をはじめ多くを失った主人公寅子(ともこ)。戦争を放棄し、個人の尊重や法の下の平等を掲げる日本国憲法を手に立ち上がる―。NHKの朝ドラ「虎に翼」のこのシーンに胸が熱くなりました▼兵庫県で暮らす小林宝二さん(92)は耳が聞こえません。2年前に亡くなった妻の小林喜美子さんも。64年前に2人は結婚。数カ月後、喜美子さんの妊娠が分かり喜び合いました▼その翌日―。2人の母親が話し合い喜美子さんは病院に。「子どもを捨てる手術を強制されました」。また赤ちゃんを、との願いがかなうことはありませんでした。2人に伝えられることなく不妊手術をさせられていたからです▼「不良な子孫の出生を防止する」。旧優生保護法はそううたい、喜美子さんに手術を強いました。制定されたのは、憲法が施行された1年後のことです。国は、障害のある人たちを「劣った人間」で平等に扱わなくてよいとする優生思想を社会にしみわたらせました▼「裁判官、私の声が届いているでしょうか」。宝二さんは先月末、最高裁大法廷で車いすの上から手話でそう語りかけました。「子どもを捨てられ、子どもが生まれない手術もされ、差別された苦しい人生を、どうか理解してください」▼寅子を励まし再起させた憲法13条と14条。この下で抑圧され、差別されつづけてきた被害者に、国はしっかり向き合い、謝罪しなければなりません。最高裁判決がどうなるか、見守りたい。障害のある人たちが翼を手にはばたけるように。


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