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2024年6月1日(土)

主張

裏金原資に税還付

常套手段でないのか調査せよ

 自民党が裏金事件の真相解明に背を向け、企業・団体献金の温存など抜け穴だらけの政治資金規正法の改定に躍起になるなか、驚くような裏金の“活用法”が明らかになりました。

■自分で自分に寄付

 派閥の政治資金パーティー収入のキックバック(還流)で裏金を手にした政治家個人が、裏金を原資に自らが代表を務める政党支部に寄付し、それによって所得税の控除を受けていたのです。

 裏金事件で「党役職停止6カ月」の処分を受けた自民党安倍派の菅家一郎・元副復興相(衆院比例東北ブロック)は、2018~21年の4年間に受け取った裏金1289万円の全額を、自身が支部長だった自民党支部などに個人名義で寄付したうえで国に控除を申請し、約148万円の還付(今年1月に返納と説明)を受けたと認めました。

 租税特別措置法では、個人が政党や政党支部に寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれます。有権者の政治参加と個人献金を促すためです。

 菅家氏は「法を犯したわけじゃない。適正にやっていた」(27日の記者会見)と居直りました。しかし、岸田文雄首相は派閥からキックバックされた金について、繰り返し「政治団体でなく個人が受け取ったならば法律違反」と答弁してきました。

 派閥などの政治団体が政党支部や政治家個人の資金管理団体などに寄付するのは、政治資金収支報告書にきちんと記載すれば違法ではありません。自民党はこれを記載せず裏金にしてきました。

 菅家氏の場合、こうした金を違法に個人の懐に入れ、それを原資に実質的に自分で自分に寄付し、税の還付を受けていました。二重三重に悪質な行為です。

■深まる使途の疑惑

 看過できないのは、政党支部への寄付について菅家氏が会見で、安倍派から「政治資金収支報告書に記載するな」と指示され、税の還付は「私だけではない」と語っていることです。80人超の裏金議員の間でこうしたやり方が常套(じょうとう)手段となっていないのか。自民党として調査すべきです。

 196万円の裏金があった安倍派の稲田朋美幹事長代理(衆院福井1区)も、自らが代表を務める党支部に202万円を寄付し税控除を受けたことを認めました。稲田氏は裏金が原資ではないと言うだけで根拠はあいまいです。

 稲田氏は、全会一致で議決した衆院政治倫理審査会への出席意向の確認で「さらに説明を求められれば、拒むものではない」と回答しています。ならば裏金の使い道を含め少なくとも政倫審で説明すべきです。

 自民党は2月発表の裏金議員からの聞き取り調査結果で、裏金を政治活動費以外に用いたと述べた者はいなかったと片付けました。しかしその後、選挙買収に使われた疑惑も浮上、脱税の疑惑も消えません。裏金を原資に税還付を受ける政党支部への寄付なども調査結果にはありません。

 裏金づくりは誰がいつ始め、何に使ったのか―。徹底的な実態解明抜きの政治資金規正法改定の強行などもってのほかです。


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