しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年2月2日(金)

志位議長の代表質問

衆院本会議

 日本共産党の志位和夫議長が1日の衆院本会議で行った代表質問は次のとおりです。

能登半島地震への対応を問う

写真

(写真)質問する志位和夫議長=1日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。

 冒頭、能登半島地震で亡くなられた方々に心からの哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。自らも被災しながら懸命の救援活動を行っている地元自治体をはじめ関係者の方々に心からの敬意と感謝を申し上げます。

被災者の命と健康を守り抜くために、実態をつかみ、支援を現場に届け切る

 被災者の命と健康を守り抜き、「災害関連死」を防ぐことは、政府の最優先の責務です。

 総理は、1月9日、「物資集積所の先にある、実際に必要な場所に、モノや支援を行き届ける」とのべました。ところが地震発生から1カ月がたっても、災害救助法で定められた温かく栄養のある食事が行き届いていません。段ボールベッドがどう被災者に届いているのか、車中泊や農業用ハウスなどに避難されている方々、自宅避難や2次避難をされている方々の実態がどうなっているのか、十分に把握がされていません。プライバシーの確保をはじめ、ジェンダーの視点にたった支援で、東日本大震災の教訓が生かされていないとの厳しい指摘がされています。

 総理、被災者の置かれている実態をつかみ、求められる支援を現場に届け切るために、必要なマンパワーの確保を含め、政府としていつまでにどうするのか、具体的に示していただきたい。答弁を求めます。

住宅と生業の再建――政府が「希望」のメッセージの発信を

 「能登に住み続けることができる希望がほしい」。被災者の方々の痛切な願いです。いま政府が「希望」のメッセージを発信することが必要です。

 ところが政府が決定した「支援パッケージ」はどうか。住宅再建のための被災者生活再建支援金は、最大でも従来と同額の300万円。資材高騰、高齢化率の高さを考えるなら、これでは住宅再建への希望はもてません。「半壊」「一部損壊」に支援対象を広げるとともに、少なくとも600万円以上に支援額を引き上げるべきではありませんか。

 中小小規模事業者の施設等の復旧支援も、補助率は従来と同率の4分の3です。全額補助をすべきではありませんか。

 総理は、施政方針演説で、「異例の措置でもためらわず実行」と明言されました。ならば、従来なみの支援にとどまるのでなく、災害の特別の深刻さに見合った「異例の措置」をちゅうちょなく実行していただきたい。答弁を求めます。

政府の政策の緊急見直しを提起する――原発は廃炉に、大阪万博は中止を

 今回の震災にかかわって、二つの点で政策の緊急の見直しを提起します。

 一つは、原発の問題です。今回の地震は、原発事故のさいの避難計画が「絵に描いた餅」にすぎないことを明るみに出しました。志賀原発の避難計画は、高速道路、国道、県道、市町の道路を使って30キロ圏外に15万人が避難するというものですが、いたるところで道路網が寸断されるもとで、まったく実行不可能な計画でした。総理、地震・津波など自然災害によって原発事故が起きたら、住民は避難することさえできない、それでも再稼働せよというのが政府の方針ですか。わが党は、すべての原発の廃炉を求めますが、とりわけ深刻なトラブルが発生した志賀原発、柏崎刈羽原発はただちに廃炉の決断をすべきではありませんか。

 いま一つは、大阪万博の問題です。能登半島地震では、住宅の被害も、道路、水道、港湾などインフラの被害も、きわめて甚大です。総理、万博に建設資材、重機、マンパワー、そして巨額の税金を使っている時か、能登半島地震の復旧・復興こそ最優先でという声が広がるのは当然だと考えませんか。この期に及んで「カジノのための万博」にしがみつき、限られた資源を、半年でつぶすパビリオンなどに費やすべきではありません。大阪万博はきっぱり中止の決断をすべきです。答弁を求めます。

巨額の裏金問題を問う

「民主政治の健全な発達」を妨害する組織的犯罪行為だという認識と反省はあるか

 「しんぶん赤旗」日曜版のスクープに端を発した自民党の政治資金パーティーをめぐる巨額の裏金問題に、国民の深い批判と怒りが沸き起こっています。総理の基本的な認識と対応について、3点伺います。

 第一は、総理が、この問題の性格をどう認識しているのかということです。今回の事態は、自民党の主要派閥がそろって、政治資金パーティーにおける政治資金収支報告書を偽造していたという自民党ぐるみの組織的犯罪です。ところが総理の施政方針演説では、「国民から疑念の目が注がれる事態を招いた」ことへの「おわび」を言うだけで、この問題がどういう重大な性格をもっているかの認識と反省はかけらもありません。

 政治資金規正法は、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」ため、政治資金の流れを透明化し、「民主政治の健全な発達に寄与する」ことを目的とすると明記されています。

 総理、自民党が行っていたことは、政治資金規正法のこの根本精神をじゅうりんし、「民主政治の健全な発達」を妨害する組織的犯罪行為だという認識と反省はありますか。答弁を求めます。

裏金問題の全容解明にフタをしたまま、「政治刷新」を言っても何の意味もない

 第二は、自民党内でシステム化していた裏金づくりの全容解明の意思が総理にあるのか、という問題です。

 すでに安倍派、二階派、岸田派の会計責任者が政治資金規正法違反で起訴されましたが、政治資金収支報告書を偽造し、巨額の裏金をつくるシステムが自民党のなかに確立していたという認識が総理にはありますか。

 総理は、施政方針演説でも裏金という言葉を一切使っていませんが、総理が繰り返す「実態の解明」の「実態」とは、いったい何の実態なのですか。なぜ「裏金づくりの実態を解明する」と言えないのですか。説明していただきたい。

 誰が、どれだけの裏金をつくり、何につかったか。どのような裏金システムがつくられていたのか。それらを、自民党の責任者として、過去にさかのぼって、洗いざらい明らかにすべきではありませんか。

 裏金問題の全容解明にフタをしたまま、いくら口先で「政治刷新」を言っても、何の意味もないと考えますが、いかがですか。お答えください。

企業・団体献金と政党助成金に対する認識と態度を問う

 第三は、総理が、金権腐敗政治の根本にある企業・団体献金禁止に背を向けているという問題です。

 1980年代以降、金権腐敗事件が相次ぎ、「政治改革」が唱えられました。しかし、当時の「非自民」政権と自民党の談合によって、問題が「小選挙区制の導入」にすり替えられました。それでも、1994年の細川首相と自民党の河野総裁の会談で、政党助成金をつくることと引き換えに、5年後に企業・団体献金を禁止することが合意されました。ところがこの約束は反故(ほご)にされ、99年の法改定で、政党や政党支部に対する企業・団体献金は合法とされ、政治資金パーティー券購入という形での企業・団体献金も合法とされるという「二つの抜け穴」がつくられました。このゴマカシのツケがいま巨額の裏金問題として噴き出しているのであります。

 選挙で一票を投じることができるのは主権者である国民だけであり、企業に一票を投じる権利はありません。総理、経済的に圧倒的な力のある企業が献金をすることは、金の力で政治をゆがめ、一人一人の国民の参政権を侵害することになることは明らかですが、あなたにそうした認識はありますか。

 さらに、企業・団体献金禁止と引き換えに政党助成金を導入したはずなのに、自民党が、毎年、百数十億円もの政党助成金を手にしながら、企業・団体献金をもらい続けるという「二重取り」を続けていることは、国民を愚弄(ぐろう)する公約違反ではありませんか。

 日本共産党は、この国会に、パーティー券を含めて企業・団体献金を全面禁止する法案と、政党助成制度を廃止する法案を提出しています。わが党の提案に対する総理の見解を問うものです。

税、賃上げ、介護――経済政策の根本を問う

法人税減税が失敗というなら、「法人税減税=消費税増税」路線を根本からあらためよ

 物価高騰からいかにして暮らしを守り、経済を立て直すか。岸田政権の著しい特徴は、これまでの経済政策の失敗を自ら認めながら、失敗した道を転換することができないという文字通りの政策破綻に陥っていることにあります。

 たとえば税金の問題です。

 自民党が昨年12月に決定した「税制改正大綱」では、日本の法人税率が、「約40年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は、最高時より20%ポイント程度低い23・2%となっている」こと、法人税率の引き下げにより、「企業経営者が……内部留保を活用して投資拡大や賃上げにとりくむことが期待された」こと、しかしそれは実現せず、「賃金や国内投資は低迷」し、「企業の内部留保は555兆円と名目GDP(国内総生産)に匹敵する水準にまで増加」したことを指摘し、次のように結論づけています。

 「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」

 要するに“失敗した”ということです。

 総理、そうであるならば、長年続けてきた法人税を減税し、その穴埋めに消費税を増税する路線を根本的にあらためることが必要ではないでしょうか。来年度予算で、相変わらず大企業と富裕層向け減税のバラマキを続けるのは、失敗の繰り返しになるだけではありませんか。富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を5%に緊急に減税し、インボイス増税を中止することこそ、失敗から学ぶ道ではありませんか。答弁を求めます。

「賃上げ減税」が「効かない」なら、中小企業への社会保険料減免などの直接支援を

 賃上げについても同じです。

 自民党の「税制改正大綱」では、労働者の7割が働く中小企業について、その多数が赤字企業であり、賃上げにむけた「税制措置のインセンティブが必ずしも効かない構造となっている」という事実を認めています。

 ところが総理が施政方針演説で強調したのは、自分で「効かない」と認めた「賃上げ税制の拡大強化」です。5年先に黒字になったら減税すると言いますが、いま赤字経営に苦しんでいる中小企業が、5年先の減税をあてにして賃上げをするというのは、誰が考えても絵空事ではないでしょうか。

 中小企業の賃上げに「税制措置」が「効かない」と認めるなら、赤字企業も含めてすべての中小企業への支援になる社会保険料減免などの直接支援が必要ではありませんか。日本共産党は、大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、10兆円の税収を中小企業の賃上げ支援にあて、最低賃金を時給1500円に引き上げる提案を行っていますが、こうした抜本的方策をとることこそ、失敗から学ぶ道ではありませんか。答弁を求めます。

介護保険大改悪の検討をただちに中止し、国庫負担増額に踏み出せ

 政府は、介護保険について、「利用料の原則1割負担から2割負担への引き上げ」「要介護1・2の在宅サービスの保険給付外し」「ケアプラン作成の有料化」などの制度改変を、2026~27年を目途に検討し、具体化に動きだすとしています。

 「利用料が2倍になったら払えない、施設を退所して在宅介護を選ぶしかない」との不安が広がっています。さらに、すでに実施されている要支援1・2の保険給付外しに続いて、要介護1・2の在宅サービスまで保険給付を外すとなれば、要支援・要介護と認定された方々の実に65%が保険給付でサービスを受けられなくなります。総理、「これでは国家的詐欺だ」という批判にどう答えますか。

 苦しめられるのは高齢者だけではなく、現役世代の「介護離職」をさらに加速させるなど、全ての世代です。経済にも社会にも悪循環をもたらす介護保険大改悪の検討をただちに中止することを強く求めます。

 真に持続可能な公的介護制度にする唯一の道は、国庫負担の増額しかありません。自民党も公明党も、民主党政権の野党だった時期に、介護保険の公費負担割合を50%から60%に引き上げることを公約しています。かつて自公両党も掲げていたこの改革以外に、公的介護制度を維持・発展させる道はないと考えますが、いかがですか。総理の答弁を求めます。

米中対立のもとでの日本の進路を問う

大国の関与を歓迎するが、一方の側に立たない――ASEANの英知に学ぶべき

 米国と中国の対立が強まるもとで日本の進路はどうあるべきか。

 私は、昨年末、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加入する三つの国――インドネシア、ラオス、ベトナムを歴訪しました。徹底した対話の積み重ねによって東南アジアを平和の共同体に変えたASEANの経験に、目が見開かされることの連続でした。

 ジャカルタのASEAN本部を訪問したさいのASEAN事務局次長との意見交換で、私が、「ASEANの成功の秘訣(ひけつ)は何ですか」と尋ねますと、先方からASEANの中心性が重要ですという答えが返ってきました。つまり大国の関与を歓迎するが、一方の側に立たない、アメリカの側にも立たないし、中国の側にも立たない、中立と自主独立を貫くことがASEANの立場とのことでした。私は、ここには日本外交が学ぶべき英知が示されていると考えますが、総理は、ASEANの中心性についてどういう見解をお持ちですか。

米国言いなりの「戦争国家づくり」でなく、自主自立の外交で平和をつくる道への転換を

 ひるがえって日本政府の立場はどうでしょうか。

 アメリカに言われるままに、「専守防衛」を投げ捨て、敵基地攻撃能力保有と大軍拡を進めています。「国際紛争を助長しない」という理念を投げ捨て、殺傷武器輸出解禁を強行し、「死の商人国家」に堕落しようとしています。沖縄県民の圧倒的民意に背いて、「代執行」という前代未聞の乱暴なやり方で辺野古新基地建設を強行していることは、決して許すわけにはいきません。総理、これらのすべてが、世界における「平和国家・日本」の評価を大きくおとしめ、北東アジアにおける軍事対軍事の悪循環を加速させているという自覚があなたにはありますか。

 総理、米国言いなりで「戦争国家づくり」に突き進むのでなく、現にASEANが実践しているように自主自立の外交によって平和をつくる道に転換することこそ、日本に強く求められているのではないでしょうか。

 ASEANの国ぐにと協力し、東アジアサミット(EAS)というこの地域のすべての国を包摂する枠組みを活用・強化し、「対抗でなく対話と協力」の東アジアをめざすASEANインド太平洋構想(AOIP)を共通の目標として、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした平和外交にとりくむことこそ、未来ある道ではないでしょうか。総理の答弁を求めて質問を終わります。


pageup