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2023年12月14日(木)

主張

マイナ保険証一本化

信頼ない制度は中止しかない

 岸田文雄首相は12日、マイナンバーのひも付けの誤りに関する総点検が完了したとして、健康保険証を予定通り来年秋に廃止し、マイナンバーカードに一本化することを政府の総点検本部で表明しました。誤って登録されていた公的情報は1万5907件で、このうち健康保険証が8695件と半数以上でした。保険診療を大混乱させたことへの反省はありません。

 医療機関で保険資格の確認にマイナ保険証が使用された比率は毎月減りつつあり、今や全体の5%未満です。国民の信頼を失ったマイナ保険証への一本化はやめるしかありません。

おざなりの点検で強行へ

 首相は保険証の廃止についてこれまで「国民の信頼回復が前提」と繰り返してきましたが、不安払拭にほど遠い状況です。

 保険証以外のひも付けの誤りは障害者手帳が5645件、公金受取口座が1186件と、国民生活の広い分野で混乱を招きました。

 そもそも今回の作業は、総点検といいながら、対象を限定した不十分なものです。マイナンバーとひも付いた個人情報すべてに登録の誤りがないかを調べたわけではありません。ひも付ける際の手順に間違いがあったことが判明した8208万件だけが対象でした。調査対象にならなかったひも付けでも、誤った情報が登録されていた事例が見つかっています。

 総点検とは別に厚生労働省がマイナ保険証を点検したところ、住民基本台帳の氏名や住所と一致しないものが約139万件ありました。この確認作業は来年春ごろまでかかるといいます。

 マイナカードの交付数は累計9700万枚を超え、ひも付けられた個人情報は合計で数十億項目とみられます。数カ月の作業で点検しきれるものではありません。おざなりの調査で保険証を廃止するのは、あまりに乱暴です。

 保険証廃止後は、マイナ保険証を持たない人すべてに健康保険の資格確認書を交付します。マイナ保険証の保有者には、自分の保険資格を簡単に確認できるよう「資格情報のお知らせ」を送付し、医療機関の窓口でマイナ保険証を読み取れない場合に提示してもらうといいます。

 現行の保険証をそのまま存続させれば、いずれも不要です。

 高齢者施設では入居者のマイナカードや暗証番号を預かって管理することへの不安が切実です。政府は、暗証番号が不要な顔認証カードを発行するとしていますが、そのようなことをしなくても保険証をなくさなければ解決します。

 保険証を廃止しなければならない理由はますますなくなってきました。

国民の声に背向ける首相

 保険証は国民皆保険の根幹です。医療機関の窓口で見せるだけで保険診療を受けられます。この制度を投げ捨て、巨額の予算と人手をかけて、欠陥だらけのマイナ保険証に一本化するのは愚策というしかありません。保険証廃止を強行すれば、混乱が今と比べようもなく広がることは明らかです。

 岸田首相は総点検本部の会合で「まずは一度、国民にマイナ保険証を使って」メリットを感じていただきたいと述べました。メリットを実感するどころか、不信を募らせている国民の声に背を向ける姿勢があらわれています。