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2023年12月6日(水)

主張

「慰安婦」訴訟判決

日本政府は被害者に向き合え

 韓国のソウル高裁は11月23日、日本軍「慰安婦」被害者16人への損害賠償を行うよう日本政府に命じました。原告の訴えを退けた一審を破棄し、訴えを全面的に認めた逆転判決です。「慰安婦」問題は、日本が起こした侵略戦争のさなか植民地の朝鮮や台湾をはじめアジア各地で女性たちを強制的に集め、性行為を強要した重大な人権侵害で、当時の国際法に照らしても違法な戦時性暴力です。日本政府は「断じて受け入れられない」との態度に固執するのでなく、被害者に向き合い、問題解決のため、誠実に力を尽くすべきです。

核心否定発言が批判呼ぶ

 日本政府は、「慰安婦」問題は全て解決済みと主張しています。日韓両政府は2015年に「慰安婦」問題に関する合意を交わしました。同合意で日本側は「心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」し、被害者の癒やしの事業として10億円の拠出も行いました。

 日本政府はソウル高裁判決について韓国側に抗議しました。国家は他国の裁判権に服さないとする、これまで国際慣習法上の原則とされてきた「主権免除」を根拠に、韓国での裁判や判決そのものを認めない立場です。

 ソウル高裁判決は、日本に植民地支配されていた朝鮮半島で行われた韓国国民に対する不法行為には主権免除は認められないと判断しました。当時の日本政府が「軍人の士気高揚などを目的に慰安所を設置・運営し、女性らを強制的に拉致するなどして動員し、望まない性行為を強いた」と指摘しています。

 争点となった主権免除については議論が続いていますが、近年、適用除外を広げた判決も出ています。植民地支配や奴隷制度の責任を過去にさかのぼって問う動きなど、人権をめぐる国際規範の前進が背景にあります。今回の判決を原告や支援者らは「国家中心の国際法の秩序が、人権中心に変わりつつある」と歓迎しました。

 日本政府が考えるべきは、15年の日韓合意後の対応です。当時の安倍晋三首相は合意直後から「性奴隷といった事実はない」などと「慰安婦」問題の核心を否定する発言を国会で繰り返し、被害者への肉声による謝罪も拒否してきました。そうした言動が批判と合意への疑念を呼び、新たな裁判に踏み切る被害者が出てきたのです。

 1991年に韓国の金学順(キム・ハクスン)さんが実名で名乗り出て以降、フィリピン、中国、オランダなどの被害者も次々と証言し、日本政府に謝罪と補償を求めてきました。今回の裁判の原告らも性行為の強要で無数の傷を負い、死の危険を被り、戦後も社会に適応できない損害を受けました。日本政府は、判決に抗議するのではなく、被害の事実に改めて向き合う立場に立つことが必要です。

表明にふさわしい行動を

 岸田文雄首相は今年3月、植民地支配への日本側の「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」や「両国国民、特に若い世代が歴史への認識を深めることが重要」と明記した1998年の日韓パートナーシップ宣言を引き継ぐと表明しました。この表明や2015年の日韓合意にふさわしい行動―被害者の心に届く謝罪、名誉と尊厳を回復する真摯(しんし)な努力―が求められています。


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