しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年9月12日(火)

G20首脳宣言 世界の課題にこたえたか

ウクライナ侵略・途上国債務・気候

 【ニューデリー=秋山豊】今回の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言は、初日の9日に「採択された」とインドが発表する異例の経過をたどりました。議長国インドの当局者は「100%のコンセンサスを得た」と誇らしげに語りますが、中身が世界の課題にこたえられるものかどうかについて、専門家から厳しい見方が出ています。

表現が弱まる

 昨年11月のG20の首脳宣言は、昨年3月2日の国連総会決議に触れる形で「ロシアによる侵略」「ウクライナ領土からの撤退」を明記。「ほとんどのメンバーがウクライナでの戦争を強く非難した」としながらも、「他の見解および異なる評価があった」とすることで発表にこぎつけました。

 今回の首脳宣言は、「ロシア」「侵略」「非難」の言葉はなく、表現が弱まった印象です。

 ウクライナ外務省報道官は、首脳宣言について「誇れるものは何もない」と批判。他方、ロシアのラブロフ外相は「私たちの立場を完全に反映している」と語りました。

 ただ米国のサリバン大統領補佐官は、首脳宣言について「とても良い」と評価し、ショルツ独首相は「ウクライナの主権と領土保全を支える」ものだと発言。マクロン仏大統領は「ロシアの外交的勝利ではない」と述べました。英紙フィナンシャル・タイムズ11日付は、欧米諸国が、ウクライナの領土保全の尊重や公正な和平に言及することと引き換えに、「非難」の言葉を落とすことに同意したと報じました。

新たな資金は

 インドは「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国の声をG20に反映することを主眼にしてきました。アフリカ連合(AU)のG20加入承認は、その成果といえます。

 モディ首相は途上国の直面する食料危機や債務問題への対応を訴え、首脳宣言では、アフリカの重債務国や、経済崩壊に直面したスリランカなどの債務問題に緊急かつ効果的に対応する重要性に言及しました。

 ただし、カナダ・トロント大学G20研究グループのジョン・カートン代表は本紙の取材に対し、「現在、苦しんでいる44カ国の債務を救済する新たな資金はなかった。この会議はこれらの国の力になっていない」と厳しい見方を示しました。

 国際政治での「グローバル・サウス」の重みが増大するなか、今回のG20で欧米も新興・途上国との関係強化を図りました。

 米、欧州連合(EU)は、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)とともに、インドと欧州を中東経由の鉄道網や航路で結ぶ計画の覚書に署名。「一帯一路」プロジェクトで影響力を強める中国に対抗する動きです。

「非常に弱い」

 G20に出席したグテレス国連事務総長は、世界の温室効果ガスの80%をG20が排出しており、「中途半端な措置では気候変動を防げない」と訴えました。

 カートン氏は「首脳宣言に盛り込まれた公約の約50個が気候変動や自然環境、エネルギーに関するものだが非常に弱い。真新しい対策もほとんどない。それらに取り組む資金の動員もない。重大な過ちだ」と語りました。


pageup