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2023年7月21日(金)

主張

ロシアの合意停止

穀物輸出を戦争に利用するな

 ロシアがウクライナからの穀物輸出に関する国際合意の履行を停止すると一方的に宣言しました。世界的な食料危機をさらに悪化させ、多くの人の命を脅かすとして、国際社会で批判が高まっています。ロシアは直ちに合意に立ち戻るとともに、違法な侵略をやめるべきです。

世界の食料供給に打撃

 ウクライナは世界有数の農業国です。ロシアは昨年2月に侵攻を開始した際、主要な積み出し港がある黒海沿岸を封鎖しました。異常気象やコロナ危機の影響でひっ迫していた世界の食料供給は一段と深刻化し、価格が高騰しました。特にアフリカなどの途上国が大きな打撃を受けました。

 輸出再開に向けてトルコと国連が仲介に乗り出し、昨年7月、ロシア、ウクライナそれぞれがトルコ、国連と協定を交わしました。ウクライナとロシアは協定に関わるどんな船舶も攻撃しないことで合意しました。120日間の協定期限はこれまで更新されてきました。合意を受けて黒海に民間船舶が安全に航行できる回廊が設けられ、ウクライナは穀物輸出を再開しました。

 国連によると、合意のもとでこれまでに約3300万トンの穀物が輸出されました。

 輸出先の46%がアジア・太平洋地域、12%がアフリカです。72・5万トンが世界食糧計画(WFP)を通じてアフガニスタン、イエメンなどの飢餓に苦しむ地域に送られました。国際的な食料価格をことし3月時点の前年比で23%下げる役割も果たしたといいます。

 ウクライナからの輸出が途絶すれば影響は世界に及びます。

 ロシアは、西側諸国の経済制裁によって自国産の食料輸出が滞ったままだと主張し、合意の停止を繰り返し示唆してきました。プーチン大統領は19日、政府の会議で改めて西側諸国を非難し、ロシアの要求が受け入れられ次第、合意に復帰すると述べました。

 貿易の決済を困難にする国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除をはじめ、ロシアに対する制裁は違法なウクライナ侵略に対して行われています。制裁の緩和を合意履行の条件にするなど問題外です。

 合意の停止によってウクライナから黒海への回廊がなくなり、再びロシアがウクライナ沿岸を封鎖することになります。

 新たな強硬手段を宣言したことも重大です。

 ロシア国防省は19日、ウクライナの港湾に向かうすべての船舶は潜在的に軍事物資を積んでいると見なすと発表しました。ウクライナに入港する船舶が国旗を掲げている場合、その旗の国はウクライナのゼレンスキー政権側と認定すると主張しました。民間船舶に武力攻撃の脅しをかけることは戦争を拡大させかねません。

即時・無条件撤退こそ

 合意停止を巡って開かれた17日の国連安全保障理事会でも各国がロシアに合意への復帰を求め、戦争の停止を呼びかけました。

 ロシアの侵略は、国連憲章と国際法が定めた「主権と領土保全の尊重」の原則を踏みにじる行為です。国連総会で繰り返し、ウクライナからの即時、完全、無条件の撤退が決議されています。世界の声に逆らい続けることは許されません。


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