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2023年5月31日(水)

主張

保育士の本格増員

基準改定に踏み切る決断こそ

 国が省令で定める保育士の配置基準の改定を求める声が高まっています。配置基準は、保育士1人が受け持つ子どもの数です。4~5歳児では子ども30人には最低1人の保育士を配置するとしていますが、1948年の制定以来、変わっていません。国際的に比較しても日本の配置基準はあまりに低く、子どもたちの豊かな育ちや安全な生活を保障する基準にはなっていません。岸田文雄政権は「異次元の少子化対策」を掲げました。それならば、70年以上放置してきた配置基準そのものの抜本改定に今こそ踏み切るべきです。

「加算」では打開できず

 岸田政権は3月31日に発表した少子化対策(試案)で、保育士1人当たりの基準について▽1歳児は6人から5人▽4~5歳児は30人から25人―へ「改善」するとし、「75年ぶりの配置基準改善」と明記しました。この記述は、配置基準を変えることを長年求めて運動を続けてきた保育現場や関係者の期待を集めました。

 ところが発表直後、小倉将信こども政策担当相は「配置基準自体を引き上げた場合は、全ての施設で新しい基準に見合うだけの保育士を確保する必要があるため、保育の現場に混乱が生じる可能性もある」(4月4日の参院内閣委員会、日本共産党の井上哲士議員への答弁)などと主張し、基準改定に手を付けない姿勢を示しました。

 政府が進めようとしている「配置基準改善」は、保育士を基準より手厚く配置した保育所の運営費を増額する「加算」という限定的な手法にとどまることが危惧されます。これでは、全ての保育所で保育士が増員されることにつながりません。

 配置基準は、保育所の運営・認可に必要とされる保育士数の最低基準です。自治体や民間施設では、保育の質を守るために、国の配置基準を超えて独自に保育士を配置しているところは多くあります。しかし、保育所の運営費は配置基準をもとに計算されるため、保育士の賃金が抑え込まれる場合が少なくありません。

 基準以上で配置した場合の「加算」は2015年から3歳児を対象に行われていますが、この「加算」では常勤保育士の1人分にもならないと指摘されています。

 政府は基準改定をしない理由に、保育士の確保が困難であることを挙げます。保育士の資格を持つ人の4割弱しか就労していません。保育士確保が困難なのは、保育士の定着が進まないためです。

 その背景には、子どもの成長と発達を保障できる保育をする余裕のない過酷な労働環境の広がりがあります。保育士が専門職にふさわしく、生きがいを持って働き続けたいと思える処遇の改善を図ることが急務です。公的責任を後退させた自民党政権の保育政策を根本的に改めなければなりません。

広がる「もう1人」の声

 「子どもたちにもう1人保育士を!全国保護者実行委員会」が17日記者会見し、「配置基準を抜本的に見直し、どの地域でも豊かな保育環境を」と訴えました。同実行委は21年に愛知県の保育関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委」の保護者が取り組みを全国に広げようと呼びかけ設立されました。運動のうねりをさらに大きくし、力を合わせ、よりよい保育を実現しましょう。


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