2022年5月13日(金)
目の前の人助ける気持ちが支え
ポーランドのウクライナ難民
“今度は私が支援する側に”
ロシアのウクライナ侵略が長期化するなか、ポーランドのワルシャワ市内に設置されたウクライナ難民の一時保護テントで、戦火を逃れてきた難民が支援する側に回っています。キーウ(キエフ)出身のイリーナさん(40)はその一人です。(ワルシャワ=桑野白馬 写真も)
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ワルシャワ中心部から路面電車で約20分、ワルシャワ東駅にテントはあります。入り口で「ようこそ」と出迎えてくれたイリーナさんの仕事は、難民の通訳のほか、さまざまな質問に答え、精神的に寄り添うことです。
訪れる人たちは、食料や医薬品、携帯電話、宿泊場所の確保といった緊急の問題から、仕事や子どもの勉強など、さまざまな心配事を抱えています。「長時間の移動で疲れた上に言葉や文字が分からないのはつらい。早く休みたいと思っても、子どもが体調を崩していたら、そうはいきません」
イリーナさんは3月初め、キーウ爆撃を受けて避難を開始。母と15歳の息子、親戚の8人で48時間かけてワルシャワにたどり着きました。テントで少し落ち着くと、子どもの将来に加え、お金や仕事の不安が一気に押し寄せ、眠れなくなりました。
爆撃を体験してシェルターで過ごした人たちは、上空を通過する飛行機の音に驚き、泣きだしてしまうこともあります。「『ここは安全だから安心して。あなたが生きていてよかった』と声をかけています」
「ポーランドの人々に感謝している」と話すイリーナさんは、ウクライナの話になると、声を詰まらせ、涙を浮かべながら言葉をつなぎます。「夫は国に残ってたたかっています。押しつぶされるような不安に何とか耐えられるのは、この仕事があるから。目の前で困っている人を助けたい気持ちが、日々の支えになっています」
施設を管理する国際NGOの「ポーランド国際援助センター」は、テントでの通訳や国内の学校の教師として難民を積極的に採用しています。スタニスク・アヤウスキ広報担当(28)は「お互いの心のケアにもつながる重要な試みで、今後も続けていきたい」と話しました。