2022年5月13日(金)
主張
経済安保法の成立
軍事と一体化許さぬ声大きく
経済安全保障法が11日の参院本会議で可決・成立しました。経済安全保障といっても、国民の暮らしに直結する食料やエネルギーの自給については触れていません。経済活動と科学技術研究を国家安全保障の柱に据え、軍事と一体化させて統制を強める法律です。日本共産党は反対しました。学問の自由に対する介入や、政府による恣意(しい)的運用を許さないよう世論を広げていくことが重要です。
米の対中戦略に組み込む
1月の日米首脳会談は、中国との覇権争いを念頭に経済安保での緊密な連携を確認しました。経済政策についての閣僚会議の設置も決めました。その上で国会に提出されたのが経済安保法案でした。
国会で岸田文雄首相は「特定の国を念頭に置いていない」と繰り返し答弁しました。しかし、日本経済を米国の対中戦略に組み込む狙いは隠せません。参考人質疑でも、米国の動きと軌を一にした法案であることが指摘されました。
企業や科学技術研究に国の介入を強める法律なのに、政省令で定める事項が138もあり、運用が政府に白紙委任されています。「経済安保」の定義すら明記されず、何から何を守る法律なのかも不明にされています。
「特定重要物資」の安定供給を図り、「外部から行われる国家・国民の安全を害する行為」を防ぐとしていますが、何が該当するかも示されません。
「基幹インフラ」を担う企業は、企業秘密であるサプライチェーン(供給網)について政府に報告させられます。納品業者、委託業者まで含まれ、政府はこれに対して勧告、命令を行うことができます。どこまで詳細な報告を求めるかは法に明示されず、政府の判断次第です。
統制の一方、「安定供給確保支援」を名目に大企業に助成金を出します。特定企業への巨額の公費投入が横行し、政治・官僚・業界の新たな癒着を生むことになりかねません。
同法が科学技術の軍事利用を強めようとしていることは重大です。政府が「特定重要技術」を指定して研究開発に「指定基金」から資金を提供します。政府は、研究成果を軍事利用する可能性があると答弁しています。基金で設置される官民の協議会参加者には罰則付きで守秘義務が課されます
「機微情報」を扱う人の個人情報を調査する制度の導入も今後の検討課題とされました。
特許出願の非公開制度も導入されます。政府が軍事技術を非公開に指定することが可能です。公開を原則とする現行制度に反し、科学技術の発展に逆行します。
自由な科学研究妨げるな
国会の審議では自民党議員が、日本学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明」を繰り返し非難しました。研究が科学者の意図を離れて軍事転用されないよう、その可能性がある研究の適切性を審査すべきだとの提言です。これを敵視するところに、科学を軍事に利用する狙いが表れています。
中国の覇権主義的行動や知的財産権をめぐる問題には事実に基づく批判と外交的な対応が必要です。経済や科学技術を軍事対軍事の対決に組み込むことは解決の妨げにしかなりません。平和の国際秩序と平等互恵の経済関係を築く努力こそ追求すべきです。