2022年4月30日(土)
主張
再エネ「出力制御」
最大限活用できる改革を急げ
大手電力会社が再生可能エネルギーの事業者に対し発電の一時的な停止を求める「出力制御」の動きが広がってきました。資源エネルギー庁と電力各社は、電力需要が減ったときに太陽光や風力を含めた供給が上回り、需給バランスが崩れるのを回避するための措置だといいます。
「調整弁」扱いは足かせ
3月には福島県沖地震による複数の火力発電の停止に、突然の寒波が重なって電力需給ひっ迫警報が出されました。ロシアのウクライナ侵略によるエネルギーの安定供給への不安が高まるもと、国内で自給できる再エネを有効活用できないことに国民から疑問の声が出ています。再エネを最大限活用できる政策転換が急がれます。
再エネの大規模な出力制御は、2018年10月の九州電力管内が最初でした。同管内では、これまで約250回行われてきました。今月に入り、四国電力管内、東北電力管内、中国電力管内で実施されました。いずれも各管内では初めてです。北海道電力管内でゴールデンウイークに行う場合もあるとされます。
晴天で太陽光の発電量が増えた一方、週末で企業や工場の電力需要が少なかったことなどが理由です。今後、他地域や年間を通して実施される可能性もあります。
資源エネルギー庁は、電力が余ると見込まれる場合、(1)火力の出力制御、水をくみ上げて蓄電する揚水の活用、(2)他地域への送電、(3)バイオマスの出力制御、(4)太陽光、風力の出力制御、(5)長期固定電源(水力、原子力、地熱)の出力制御順で対応するルールとしています。
原発をベースロード電源と位置づけ、太陽光や風力よりも、優先的に動かすという考えです。九州電力では現在、玄海原発4号機、川内原発1号機が運転中です。四国電力は伊方原発3号機を稼働させています。原発に固執する姿勢が再エネ普及の足かせになっていることは大きな問題です。
再生可能エネルギーの普及は太陽光発電を中心に進んできました。20年には、発電比率で再エネは20%をしめ、原発の4%を上回っています。政府のエネルギー基本計画でさえ30年度に36~38%まで拡大する方針です。50年までに炭素排出を実質ゼロにするには、さらなる上積みをしなければなりません。
環境面でも経済面でもメリットがある太陽光や風力の出力制御は、脱炭素対策と逆方向です。出力制御は、再エネ電力を売る事業者の収入減に直接つながります。電力が余るからといって調整弁にされるのではたまりません。
事業の新規参入者を減らし、再エネ普及に水を差すことはやめ、発展を後押しする方向に転換すべきです。
優先利用の原則確立を
天候や風力によって発電出力が左右される太陽光や風力発電を最大限に生かすには、揚水発電や蓄電池の整備とともに、余った電力を電力の消費地である大都市圏へ融通するための「連系線」の整備も重要です。
政府の対策は大きく立ち遅れています。例えば、九州と本州間の連系線を強化する計画は見送りが続いています。省エネの推進とともに再エネ電力の優先利用原則を確立し、送電網・供給体制を整備することが不可欠です。