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2022年4月19日(火)

主張

ロシアの「核脅迫」

破滅的事態阻むのは世論の力

 ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵略に際し、核兵器使用の威嚇にでていることは、世界に大きな衝撃を与えています。プーチン氏は、ロシアは「世界で最も強力な核保有国の一つ」だと公言し、「抑止力」の「特別態勢移行」を命じました。グテレス国連事務総長は、核戦争の可能性が「ありうるところに戻ってしまった」(3月14日)と危機感を強めています。核破局を引き起こさせない世論と運動を広げることが急務です。

「抑止力」の虚構あらわ

 プーチン政権の姿勢は「核抑止」―核兵器を持っていれば核使用が止められる―との理屈が全く偽りであることをあらわにしました。ロシアは核兵器で世界を脅しながら、無法な侵略を続けています。核兵器は「抑止」と無縁の脅迫と支配、侵略の道具です。また、北大西洋条約機構(NATO)の「核共有」がロシアの核使用を抑止しえないこともはっきりしました。

 ロシアは通常の戦闘でも、核兵器先制使用方針を掲げています。核攻撃で先に相手に打撃を加えて有利に戦争を進めるというものです。ロシアとベラルーシの合同軍事訓練もこのシナリオに基づいています。プーチン大統領が2020年6月に発表した「核抑止の分野におけるロシア連邦国家政策の基礎」は「国の存立そのものが危険にさらされている場合」も核使用の基準の一つに挙げています。大統領が「危機」と判断すれば、核兵器を使うことになるのです。

 ロシアが配備する戦術核兵器はアメリカが広島に投下した原爆の数倍に達するものもあります。1発だけでも結果は破滅的です。核戦争防止国際医師会議は100発の核爆発で気候変動が起き、農作物の不作などで10年間に20億人が餓死すると試算しています。核使用は全人類の生存に関わります。

 「ヒロシマ・ナガサキ」以降も朝鮮戦争やベトナム戦争などで繰り返し核使用が検討されました。一方、米ブラウン大学の政治学者ニーナ・タネンウォルド氏は、世論などで形成された「タブー」が米政権の核使用を抑えてきたことを公文書に基づいて明らかにしています。核使用を止める最大の力は、世界の反核世論と運動です。

 非人道的な結末を防ぐために全世界から核兵器を一つ残らず廃絶しなければならない―この認識を共有した諸国政府と市民社会が力を合わせ核兵器禁止条約を実現しました。ここにこそ未来があります。

 核兵器は「人間として認めることのできない絶対悪の兵器」(日本被団協「原爆被害者の基本要求」1984年)です。唯一の戦争被爆国の岸田文雄政権は今こそ、このことを被爆者とともに世界に発信しなければなりません。「核共有」を議論せよとの主張は、被爆国の政治家にあるまじきものです。

日本とアジアの平和にも

 日本政府は核兵器禁止条約に参加すべきです。6月に予定される禁止条約の第1回締約国会議にオブザーバー参加し、核兵器の非人道性を訴え、核不使用を強く求めるべきです。被爆国であり、憲法9条をもつ日本が、それにふさわしい外交を進めるなら、中国や北朝鮮をめぐる核と軍事による対立のエスカレートを抑止し、日本の安全と北東アジアの平和を守る大きな力になるに違いありません。


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