2022年4月16日(土)
主張
30年札幌冬季五輪
招致をとりやめ暮らし優先に
昨年の東京五輪の検証すら済んでいないのに、早くも別の五輪を日本に招致する動きが進められています。
札幌市は2030年の冬季五輪・パラリンピック招致を目指すことを表明し、昨年11月に概要計画案を公表しました。市が招致に前のめりになる中で、日本共産党北海道委員会、同札幌市議団は3月に声明「札幌冬季五輪の2030年招致はとりやめ、市民のくらしを豊かにするやさしい札幌へ」を発表しました。
民意軽んじる市の姿勢
市の概要計画案では大会経費を当初から最大900億円削減して2800億~3000億円とし、うち市の直接負担は459億円と公表しています。しかし、経費がこの額で収まる保証はありません。
実際、市の負担額には、起債に伴う約50億円の利息が含まれていないことも判明しています。札幌では17年、冬季アジア大会を開催し、招致段階の総事業費が最終的に倍以上に膨らむ経験をしています。昨年の東京五輪でも、当初7000億円としていた経費が約1兆5000億円になっています。ほとんどの五輪で当初予算の2倍、3倍に膨らんでいる現実を冷静に見る必要があります。
さらに問題なのは民意を軽んじている市の姿勢です。市は招致を実現するには、「市民・道民から幅広い支持を得ることが必要」と説明してきました。しかし、市は3月の意向調査で4割近い市民の反対がありながら、賛成がわずかに半数を超えたことをもって招致に突き進んでいます。しかもこれは、五輪の魅力のみを描いた資料を添付するなど賛成に誘導し、「回答をゆがめる」(「朝日」)と批判された調査でした。北海道新聞の直近の世論調査(13日付)では、市民の五輪招致反対57%、賛成42%とまったく逆の結果となっています。
東京大会をみても市民、国民の支持のない五輪は、選手も含めて不幸な状況を招くことは明瞭です。この点をあいまいにして招致を進めることは許されません。
共産党の声明は、現在の五輪が商業主義にゆがめられ、開催都市に過大な負担と不利な契約を負わせると指摘しました。さらに市が市民合意もなく「開催ありき」で突き進んでいることや、五輪経費とばく大な大型開発費用の問題を挙げ、招致の中止を求めています。
五輪に合わせてアクセス道路建設(約1200億円)や新幹線の延伸計画、市内中心部の再開発など多額の地元負担を伴う大型開発が目白押しです。市には1兆円を超す市債残高があり、しわ寄せが市民生活に及んでいます。
市民を豊かにする施策を
市議会では3月末、日本共産党や市民ネットの反対にもかかわらず、招致を目指す内容の決議を可決しました。党は市の22年度予算案に対し、五輪招致や大型開発をやめ、新型コロナ対策や抜本的な除排雪の強化、道内では札幌市だけが行っていない「福祉灯油」の実施などを行う組み替え動議を提出しました。
いま力を入れるべきは五輪や巨大開発に依存するまちづくりではなく、市民、国民にやさしく、くらしを豊かにする施策の充実です。どこから見ても五輪招致をすすめる根拠は見いだせません。招致はすぐにやめるべきです。