2022年4月12日(火)
売春防止法から転換 女性支援新法成立へ
人権すえ多様な支援うたう
実効性確保へ引き続き運動必須
虐待や暴力、性搾取・性暴力の被害など多様な困難を抱える女性を包括的に支援する新法が、今国会で可決・成立する見通しです。日本共産党を含む超党派の提案です。公的支援(現・婦人保護事業)の根拠法を、女性差別の規定をもつ売春防止法から転換し、当事者の人権保障を基本理念に掲げるもの。支援現場の長年の運動が実った画期的な法改正です。(前田美咲)
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婦人保護事業は、性売買に従事する女性の取り締まりや保護更生を目的とする売防法に基づいて行われています。当事者の女性を支援ではなく指導・管理の対象とみなす差別的な視点が同法の随所に残っています。
支援の対象は、売防法上の「売春を行うおそれのある女子」から、DVや性暴力、ストーカーの被害者などへと拡大されてきました。近年では、アダルトビデオ(AV)出演強要やJKビジネス問題への対応も迫られるなど、相談事例が多様化、複雑化。現場では、一人ひとりに寄り添った支援をしようと努力や工夫を重ねてきましたが、人権保障の理念に欠ける売防法の下では限界があるとして抜本改正を求める声が高まっていました。
行政の責務明記
新法は、基本理念に当事者の「意思の尊重」「人権擁護」「男女平等の実現」を掲げ、「女性であることにより様々な困難な問題に直面することが多い」と支援の必要性を指摘。国と地方自治体の責務を明記しています。
現行の婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設の仕組み(3機関)を残しつつ、それぞれ女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設に改称。その役割として新たに、「心身の健康の回復を図るための医学的又は心理学的な援助」や「当事者の立場に立った相談対応」「同伴児童への学習・生活支援」などを盛り込んでいます。
民間の支援団体との「協働」「その自主性の尊重」をうたい、民間団体を行政と対等な関係に位置づけます。
新法と合わせ、売防法の女性差別規定も大幅に削除。婦人保護事業の根拠規定(4章)に加え、売春の勧誘罪(5条)で執行猶予となった女性を婦人補導院に収容する規定(3章)もなくします。
支援現場からは、「困難を抱える女性に寄り添った法案」「人権、福祉がしっかり位置付けられている」など歓迎の声が上がっています。
歓迎の声が次々
日本共産党は、婦人相談員や婦人保護施設の全国団体、民間団体と折々に懇談。斉藤和子、池内沙織、藤野保史の各衆院議員(いずれも当時)、倉林明子参院議員らが、AV出演強要問題など若年女性の実情や支援体制の強化、売防法の抜本改正を訴えてきました。
党ジェンダー平等委員会責任者の倉林氏は、新法制定を「当事者、支援者の長年の運動の成果だ」と強調。他方で、残る課題として▽売防法5条の廃止▽低賃金・不安定雇用に置かれている婦人相談員の待遇改善と専門性の担保▽予算の大幅な拡充と3事業の体制強化▽住民に身近な市区の役割強化―を挙げ、「現場での支援が実効性あるものとなるよう、今後も国会、地方議会での働きかけを続けたい」と語っています。