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2022年3月29日(火)

主張

改定少年法の施行

健全な成長と立ち直り支えよ

 昨年5月に成立した改定少年法が4月1日に施行されます。18、19歳を「特定少年」と新たに規定し、17歳以下より厳罰化します。施行に伴い18歳以上から裁判員に選ばれることになります。

 少年法が「おとな」と違う刑事手続きを定めているのは、健全育成という法の目的を達成するため、刑罰を与えることよりも立ち直りを重視しているからです。改定法はその理念を揺るがしかねません。いま求められるのは、厳罰化ではなく、少年の健全な育成を支えるための法改正です。

「逆送」対象を大幅拡大

 少年事件は、成人の刑事事件と異なり、全て家庭裁判所が審理し、刑事処分が相当だと判断した場合、検察官に送致する「逆送」の仕組みをとっています。現行法では、原則「逆送」するのは、被害者の死亡という重大で明白な結果が発生している場合に限ってきました。改定少年法は、「特定少年」について「逆送」の対象を、法定刑の下限が「短期1年以上」の罪にまで大幅に拡大します。

 起訴後に実名、写真など本人を推定できる「推知報道」が解禁されます。デジタル社会化が急速に進むなか、ひとたび公開された情報は、半永久的に消えません。これからの長い人生の間、社会的制裁が続くことになります。

 立ち直りにとって重要で、就職に役立つ国家資格取得の制限もされます。社会で生き直そうとしたときに立ちはだかる壁となり、再犯や再非行をしてしまう可能性が高まるおそれがあります。

 罪を犯すおそれのある「虞犯(ぐはん)少年」については、18、19歳を保護の対象から外します。女子の虞犯比率は男子を上回り、JKビジネスやAVなど性風俗産業へのかかわりは、典型的な虞犯といわれています。

 非行少年の多くは成育環境などに困難を抱えており、少年院在院者の7割以上が家族などから虐待や暴力を受けた経験を持つとされています。適切な支援を受けることができず、結果として事件を起こしてしまうケースが多数を占めています。とりわけ18、19歳を含む若い世代はいまコロナ禍でかつてない困難に直面するなど厳しい社会環境に置かれています。個々の少年をとりまく複雑な背景をみるという、要保護性に即した調査・処遇が重要になっています。

 改定少年法の国会審議では、原則逆送事件についても要保護性に関する十分な調査が必要であることが与野党を超えて確認されました。衆参の法務委員会の付帯決議は、運用にあたって、18、19歳にも、健全な育成の観点から、立ち直りを重視した取り扱いがされなければならないことを明確にしました。

 ところが、裁判所内の改定少年法についての研修では、18、19歳には保護原理が適用されない趣旨の講演がされており、国会審議と相いれないと自由法曹団が警鐘を鳴らしています。

教育や福祉の充実に力を

 少年犯罪は年々減少しています。しかし、推知報道解禁で少年事件がことさら強調され、実態とかけ離れた国民の不安が広がり、さらなる厳罰化、適用年齢の引き下げが行われる危険があります。

 少年法の厳罰化でなく、教育や福祉を充実し、少年の成長を支えることが政治の責任です。


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