2022年3月18日(金)
経済安保法案に対する笠井議員の質問(要旨)
衆院本会議
日本共産党の笠井亮議員が17日の衆院本会議で行った経済安全保障法案への質問(要旨)は次の通りです。
「経済安全保障」とは何か、「外部から行われる行為により」「国家及び国民の安全を害する行為」とは具体的にどのような状況か、法案には何の定義もありません。政省令への委任は124カ所。政府に白紙委任せよというのですか。「経済安全保障」とは、経済を安全保障のもとに置き、軍事に組み込むことではありませんか。
経済、産業、科学技術、知的財産まで国の管理下に置くことは、戦前の国家統制そのもので、憲法に反するのではありませんか。
軍事・経済をめぐる米中の覇権争いは先鋭化しています。総理はバイデン米大統領との会談で、強固な日米同盟のもと経済安全保障での連携を確認し、「経済版2プラス2」立ち上げに合意しました。経済安全保障とは、日本を軍事・経済の両面で米国の戦略に組み込むものではありませんか。「同志国・同盟国」の枠組みの下、敵国を想定して経済の力で脅すことは、歴史の教訓を顧みないものであり、緊張関係を高めるだけではありませんか。
経済と国民生活への影響を伺います。
第一に、企業活動への制約の問題です。
サプライチェーンの政府への報告、基幹インフラの安全性・信頼性の確保や特許出願の非公開化が与える企業活動への影響について、経済界から懸念の声が上がっています。法案は、民間企業の経済活動に制約をもたらすものではありませんか。
法案では、「基幹インフラの安定的提供の確保」のため、納品業者や委託業者まで届け出させ、「審査」対象としています。政府が妨害行為の恐れがあると判断すれば審査が通りません。下請け・取引先企業の選別・監視になるのではありませんか。
政府指定の「特定重要物資」への特別支援は、半導体大手TSMC熊本工場への5千億円ともされる国費投入のような特定事業者への巨額支援の横行につながりかねません。
第二に、科学技術と人権への制約です。
総理は「デュアルユース(軍事転用可能な民生技術)での製造等に5千億円規模の支援を措置した」と答弁しています。巨額な「官民伴走支援」で、軍事技術の研究を行わせるのではありませんか。
「特許出願の非公開」・秘密特許制度が、特許法を改正せずに持ち込まれます。戦前の秘密特許制度は、9条に抵触すると廃止されました。民主化された特許制度の公開原則は、軍産一体で戦争遂行の技術開発にまい進した歴史の教訓と反省にたったものです。ところが法案は、「保全指定」を行う発明を選別し、特許手続きを「留保」し、非公開にするもので、秘密特許制度の復活ではありませんか。
法案では、「特定重要技術」の研究開発のため機微情報の管理と守秘義務を規定しています。学術分野における管理強化や非公開が研究活動や科学技術、産業活動を制約することになりませんか。
家族や交友関係、精神疾患などの調査、セキュリティークリアランス(適性評価制度)導入を検討課題としたことも看過できません。
ユネスコは、2017年11月の「勧告」で、科学技術は人類の利益、平和の保持及び国際的緊張の緩和に発展の見通しを開くと同時に、戦争や搾取等で人間の尊厳への脅威となるという危険性を指摘し、人類の尊厳を損なう場合や軍民両用に当たる場合に「良心に従って当該事業から身を引く権利」を科学研究者に認めています。法案はこの国際標準を否定するものです。
憲法は、戦前、政治権力によって人権を抑圧し、学術研究が制約・動員された反省にたち、平和原則、基本的人権の尊重、学問の自由を打ち立てました。この原則を貫き、真の経済発展と人類の進歩に貢献することこそ、わが国が進む道です。