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2022年3月16日(水)

旧ソ連・ロシアの覇権主義と対決 日本共産党

 プーチン・ロシアによる野蛮なウクライナ侵略は、多くの民族を支配下におき苦しめたロシア帝国やソ連のスターリン時代、ソ連崩壊後のロシアへと流れる歴史的に根深い覇権主義が噴出したと言えます。日本共産党は、旧ソ連時代からプーチン・ロシアまで、同国の覇権主義と正面からたたかい続けてきました。党の歴史的なたたかいを踏まえて、2020年に改定した綱領には、どんな国の覇権主義も許さない、平和の国際秩序を求める立場を明記しました。

日本共産党打倒作戦

干渉打ち破り自主独立路線

 日本共産党は、日本の党と運動を自分の支配下に置こうとするソ連から覇権主義の干渉を受け、激しいたたかいの末に、干渉を打ち破り、自主独立の路線を確立しました。ソ連側も反省の言明を行わざるを得なくなりました。

 大国から乱暴な干渉を受け、自主独立の立場からそれを打ち破った党は、世界でも日本共産党だけです。

 日本共産党が最初にソ連などから覇権主義の干渉を受けたのは1950年のことです。ソ連のスターリンは、米の軍事戦略の重点をヨーロッパからアジアへうつさせるために、北朝鮮の「南進」政策を支持します。ソ連は、米軍の後方をかく乱するため、中国を「副官」として、日本共産党に武装闘争をおしつけようとしました。党中央の一部がそれに内通・呼応して、中央委員会が解体されました(「50年問題」)。

 日本共産党は、この党史上最大の危機を乗り越える過程で、自国の革命運動の進路は自らが決めて、他国の干渉や覇権を許さないという路線(自主独立の路線)を確立しました。

 日本共産党は、81カ国の共産党・労働者党が参加する国際会議の予備会談(60年10月)で、ソ連共産党が中心になって用意した共同声明原案に80項目を超える修正案を提出し、ソ連を世界の革命運動の中心とするなどの間違った主張に対する論戦を展開しました。

 この自主独立の日本共産党の存在が許せなかったソ連は、同会議の直後から、日本共産党指導部内に内通者をつくる工作をはじめ、日本共産党打倒作戦を始めます。

 64年4月には、ソ連共産党から、日本共産党は世界の革命運動から逸脱しているなどと非難・攻撃する書簡が送られ、続いて5月に日本共産党の一部の幹部がソ連に追従して反党分派を旗揚げしました。日本共産党は同年8月、ソ連側の書簡に全面的に反論しこれまでの干渉行為を告発する「書簡」をソ連に送付。全文を「赤旗」で公開しました。

 66年からは中国・毛沢東派からの攻撃も開始されました。日本共産党は、「赤旗」に次々に論争文書を発表し、干渉攻撃を打ち破るたたかいを全国で取り組みました。

 日本共産党は覇権主義とたたかいながら、国内政治で躍進を勝ち取り、ソ連、中国両共産党とも誤りを認めざるを得なくなりました。

 ソ連共産党は79年の日ソ両党首脳会談で、ソ連の干渉についての反省を言明。中国は1998年の日中両党会談の合意文書で「内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとった」と明確に認めました。

チェコスロバキア・アフガン侵略

徹底的に批判 即時撤退要求

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 1968年8月、ソ連の覇権主義をあからさまに世界にさらけだした事件が起こりました。ソ連を中心とした軍事同盟加盟の五カ国軍によるチェコスロバキアへの侵略です。

 チェコスロバキアでは同年1月以降、ソ連への従属と官僚主義・命令主義のソ連型体制から抜け出そうとする改革運動が高まっていました。侵略軍は、改革派が占めていた政府や党の指導者を逮捕して、全土を占領しました。

 日本共産党は侵略直後に声明を発表し、干渉の即時中止と軍隊の速やかな撤退を要求。侵略はチェコスロバキア人民の主権と独立を踏みにじる科学的社会主義の原則から逸脱した大国主義だと批判しました。

 ソ連は79年12月、アフガニスタンを侵略するという暴挙にでました。ソ連は、アフガニスタンに軍隊を送り、ソ連のいいなりにならないアミン首相を殺害し、ソ連などの庇護下にあったカルマルを政権につけました。いいなりにならない政権を軍事介入で倒して、かいらい政権を打ち立てたのです。アフガニスタンを自国の「勢力圏」として守ろうとする覇権主義の野蛮な表れです。

 日本共産党は80年1月、赤旗特派員を現地に派遣して独自の調査をすすめました。ソ連軍の行動が、アフガニスタン人民の民族自決権を侵害する侵略行為であることを厳しく批判し、即時撤退を要求しました。

人間抑圧型社会

「社会主義とは無縁」と断罪

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 ソ連共産党は1991年解散し、ソビエト連邦も解体しました。日本共産党は「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉(しゅうえん)を歓迎する」という声明を出しました。声明は「大国主義、覇権主義の党が終焉を迎えたことは、これと30年余にわたってたたかってきた日本共産党としては、もろ手をあげて歓迎すべき歴史的出来事である」と表明しました。

 ソ連では工業の「国有化」や農業の「集団化」によって社会主義建設が前進しているとされていました。実際は、「国有化」や「集団化」は、社会主義の理念とは逆に、人民を経済の管理からしめだす専制主義、官僚主義の体制の土台となっていました。さらに、強制収容所での囚人労働の制度など専制的な抑圧によって社会の全体を恐怖でしめつけていました。こういう体制が社会主義とは無縁であることは明らかです。

 日本共産党は覇権主義との闘争に取り組みながらソ連社会の実態や歴史を研究し、さらにソ連崩壊後に明らかになった諸事実をもとに考察を深め、「ソ連社会は、対外関係においても、国内体制においても、社会主義とは無縁な人間抑圧型の社会であった」(第20回党大会 1994年)と結論的な認識に到達しました。

 ソ連・東欧の崩壊は、世界の平和と社会進歩の流れを発展させる新しい契機となり、さらに、世界の革命運動の健全な発展への新たな可能性を開きました。

領土問題

道理に立ち全千島返還要求

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 日ロ領土問題もロシアの覇権主義の産物です。それは、ソ連が「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則に違反したことから始まります。当時のソ連の指導者スターリンがヤルタ会談(1945年)で、対日参戦の条件として千島列島の「引き渡し」を米英に認めさせます。それに沿ってソ連軍が千島などを占拠、日本の住民を追い出し一方的に自国領として編入しました。さらに、北海道の一部である歯舞群島・色丹島まで占領してしまいました。

 そもそも、千島列島の領有権は、日本とロシアの間で1875年に結ばれた「樺太・千島交換条約」で合意しています。千島列島全体が日本の歴史的な領土というのが、両国が平和的な領土交渉で国境を画定しあった到達点です。

 日本共産党は、「日本の歴史的領土である千島列島と歯舞群島・色丹島の返還をめざす」(綱領)との立場で、国際的な道理に立った交渉こそが必要だと一貫して主張、覇権主義の誤りの是正を求め続けてきました。

 ところが日本政府は、サンフランシスコ平和条約(1951年)で、千島列島の放棄を宣言。その後、“国後・択捉は千島ではない”と言い出し、この2島と、歯舞、色丹を一体のものとして、「北方領土」とし、4島だけの返還を求めてきました。

 こうした「4島返還」さえ投げ捨て、ロシア・プーチン大統領にすり寄ったのが安倍政権です。2016年、安倍晋三首相とプーチン大統領が「4島返還」という従来の自民党方針より後退させ、事実上「2島返還」で終わらせようとする合意を行いました。同時に8項目の「日ロ経済協力プラン」にも合意しました。

 志位和夫委員長は同年12月の談話で、ロシア側が日ロ「経済協力活動」は「ロシアの主権のもとで行われる」と繰り返し表明していたことから、ロシアによる実効支配を強め「日本の領土に対する主権が損なわれる」と反対しました。

 ロシアによるクリミア半島併合問題で対ロ経済制裁を欧州連合(EU)が行っていたもとで日本がロシアとの経済協力をすすめれば、国際的なロシア制裁のとりくみを崩すことになりかねない点も指摘し反対しました。

 日本政府はロシアの覇権主義に追随して機嫌をとり、結局日本共産党の警告通り破綻を招きました。日本政府の対ロ外交の抜本的転換が必要です。

近年の侵略行為

国連憲章違反と厳しく批判

 ロシアはこれまでにも旧ソ連圏の諸国を「勢力圏」として、軍事干渉や主権侵犯を繰り返してきました。

 2008年には、グルジア(現ジョージア)との武力衝突の後、同国にロシア軍を駐留させたまま、同国の一部である南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の「独立」に一方的な承認を与えました。

 14年にはロシア軍を展開させた上で、ウクライナの領土であるクリミア自治共和国とセバストポリ特別市をロシアに「編入」すると宣言し、併合。さらにウクライナ東部のドンバス地方の一部を実効支配する親ロシア勢力に武器や兵士を送り支えるなど、侵略行為を繰り返してきました。

 いずれも当時、国際社会は「独立」や「編入」を認めずロシアの軍事侵攻は国連憲章違反の蛮行であると厳しく非難しました。

 日本共産党もロシアの覇権主義的な行動を厳しく糾弾してきました。グルジア侵攻の時には、志位和夫委員長が「ロシアによるグルジアにたいする主権侵犯について」(08年9月5日)と題する見解を発表。一方的な「独立」承認は、「国連加盟国の主権、独立、領土保全を尊重するという国連憲章、国際法の原則に反する行動である」と批判し、「独立」承認の撤回、ロシア軍の撤退とグルジアの主権尊重、外交的な話し合いによる平和的な解決を求めました。

 クリミア併合の際には、志位氏が、「ロシアはクリミア併合を撤回せよ―世界の平和秩序を覆す覇権主義は許されない」(14年3月19日)との声明を発表しました。クリミア併合は、国連憲章に違反した侵略行為そのものと断じ、併合の撤回、ロシア軍の介入の中止とウクライナの主権尊重を求めました。また、「力を背景とする現状変更の試みを看過できない」としか口にしない安倍首相に対し、侵略を認定し、ロシアを正面から批判するべきだと迫りました。

改定綱領

どんな大国の横暴も許さず

平和の国際秩序構築へ奮闘誓う

 他国の主権を侵害するどんな大国の横暴・覇権主義も許さない政党が日本共産党です。

 共産党は、第28回党大会(2020年)での党綱領改定で、「いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている。アメリカと他の台頭する大国との覇権争いが激化し、世界と地域に新たな緊張をつくりだしていることは、重大である」との記述を新たに明記しました。

 「いくつかの国」とは、中国とロシアを念頭に置いた表現です。

 ロシアのプーチン政権は、ソ連崩壊後も軍事干渉・主権侵犯を繰り返してきました。その覇権主義的行動の最悪の表れが今回のウクライナ侵略です。一方、中国は、東シナ海、南シナ海での覇権主義をエスカレートさせています。

 米中のインド太平洋地域での覇権争いの激化はアジアに新たな緊張をもたらし、ロシアでの覇権主義の台頭が、欧州に新たな緊張を生み出しています。

 こうした覇権主義についての認識を踏まえて、改定綱領には、国際連帯の課題として、「どんな国であれ覇権主義的な干渉、戦争、抑圧、支配を許さず、平和の国際秩序を築く」という立場を明記しています。相手が米国であれ、ロシアであれ、中国であれ、“あらゆる覇権主義”と正面からたたかい続けてきた歴史をもつ自主独立の党としての命題が刻まれています。


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