2022年2月23日(水)
主張
緊迫ウクライナ
許せぬロシアの度重なる暴挙
ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア勢力支配地域の「独立」を一方的に承認し、同地への軍の派遣を指示しました。ウクライナ政府は東部の独立など認めていません。国連加盟国の主権、領土保全を尊重するという国連憲章、国際法の原則に反する許しがたい行為です。
一方的独立承認撤回せよ
ロシアがウクライナとの国境沿いに大軍を展開し、軍事的圧力を強める中での「独立承認」です。グテレス国連事務総長をはじめ国際社会も一斉に非難しています。外交解決の努力にも著しい困難を持ち込みます。
独立を宣言した親ロシア勢力はロシアと「友好協力・相互援助条約」を締結し、軍の派遣を要請しました。プーチン政権はこれに応じる形で正規軍を展開する方針です。実行すれば他国領土を武力で踏みにじる行為に他ならず、犠牲の拡大も避けられません。
ウクライナ東部では2014年から政府軍と親ロシア武装勢力との間で武力紛争が続いてきました。14年と15年には停戦や平和解決について関係国間で合意が結ばれました。ロシアは、ウクライナ政府が合意を履行していないことを「独立承認」の論拠としていますが、理由になりません。自ら加わった国際合意を投げ捨て、軍事力をもって現状を変更することは断じて容認できません。
ロシアは14年に今回同様、親ロシア派住民の意思だとしてウクライナのクリミア半島を一方的に併合しました。度重なる主権侵害は、ウクライナをロシアの勢力圏とみなすプーチン大統領の大国主義的立場に基づいています。
ロシアとウクライナはともにソ連邦を構成する国でした。それ以前にも9世紀ごろから深い関係があります。プーチン大統領は歴史的関係をとらえて昨年7月、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」と題する論文を発表し、両民族は「一体不可分」と主張しました。今回の決定に際してもテレビ演説で持論を展開しました。
しかし1991年に独立国となったウクライナの針路を決めるのはウクライナ国民です。
ロシアの大国主義、覇権主義の立場はソ連を構成していた他の国にも向けられており、2008年にはやはりロシアに隣接するジョージアに軍が侵攻しました。
ロシアはウクライナとジョージアが北大西洋条約機構(NATO)に加盟すれば自国の安全が脅かされるとしています。軍事同盟の拡大は重大で、解消が求められる問題ですが、主権侵害を正当化する理由にはなりません。ロシアが軍事的圧力をかける中でウクライナではかえってNATO加盟を望む世論が高まっています。
国際法に基づいて打開を
旧ソ連の国々を勢力圏とみなし、武力侵攻したり、分裂を図ったりするロシアの行為は平和の国際秩序を危うくさせるものです。
それだけに国際社会が危機を増幅させる軍事的対応でなく、紛争の平和的解決を定めた国連憲章と国際法に基づいて外交的な打開の努力を尽くすことが重要です。
ロシアは「独立承認」と派兵の指示をただちに取り消すとともに、ウクライナ国境沿いに展開する大軍を撤退させ、軍事的圧力をやめるべきです。