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2022年2月13日(日)

シリーズ 維新の会 その実像は

大阪で何をやってきたか

府民の願いとかけ離れ

 大阪の維新府・市政は住民の願いにこたえた政治をしてきたのでしょうか。いま焦点になっている問題にてらして考えてみましょう。

「大阪都」構想

2度否決されても固執

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(写真)大阪市存続が決まり喜び合う市民キャンペーン「残そう、大阪」の有志=2020年11月1日、大阪市中央区

 大阪市をなくす「大阪都」構想は2015年5月、20年11月の2度の住民投票で否決されました。大阪市を存続させ、政令市がもつ権限と財源をいかす道を市民は選択しました。ところが、維新はあくまで大阪市つぶしに執念をみせ続けています。

 維新は2回目の住民投票で否決されるや、今度は議会の多数できめられる条例で大阪市の権限と財源の骨抜きを図りました。「住民投票こそ最高の民主主義」といっていたことがうそのようです。

 吉村洋文知事は「大阪維新の会としては『大阪都』構想は掲げつづける」(1月1日放送の民放テレビ番組)と表明し続けています。大阪市の権限も財源も「都(府)」に吸い上げ、「1人の指揮官(知事)」のもとで、好き放題のことができる体制をつくる。維新の会の党是である「大阪都」構想を掲げ続ける姿は、同党の強権的・独裁的な性格をよくあらわしています。

地方分権に真っ向から逆行

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 小西禎一さん(元大阪府副知事)の話 「大阪都」構想は、維新の一丁目一番地。この旗印は降ろせないでしょう。それ以外に党内を結束させる旗印がない。

 権限を「都(府)」に移せばいいという発想は、すべて国に権限を移せばいいということに行き着きます。中央集権がうまくいかなくなったから、地方のことは地方に任せたほうがいいということになったのに、この地方分権の流れに真っ向から逆行します。

 大阪府と大阪市の「二重行政の解消」などといっていましたが、もともと「二重行政」などない。知事のいうことをきかない大阪市長がいるのは気に食わない、黙らせろ―ぐらいの発想です。維新は知事、大阪市長の「二つの権力は並び立たない」といっていたじゃないですか。権力はひとつでいい。そういう意味では強権的ですね。

 維新は、何か高尚で体系的な理念を持つ政党だとは思わない方がいい。融通無碍(ゆうずうむげ)。選挙に勝つためには何でもやってきます。「共産党の政策だ」といって背を向けていた中学校給食も選挙に勝つためならやり、売り物にする政党ですから。

コロナ感染 全国最悪

急性期病床 20年度 229削減

 新型コロナ感染をめぐり、テレビに頻繁に登場する吉村洋文知事(大阪維新の会代表)を見て、「吉村知事はよくやっている」と感じている人も多いことでしょう。

 ではなぜ、感染者数も死者も大阪府は全国最多(人口比)で推移しているのでしょうか。そこには「維新が加速させる大阪パンデミック」(「日刊ゲンダイ」7日付)の実態があります。

 大阪の維新府政は全面的な検査に背を向けつづけました。「医療崩壊を招く」という考えにとらわれ、逆に医療崩壊を招きました。

 医療・保健体制の脆弱(ぜいじゃく)さも深刻な事態を招いています。

 「僕がいまさら言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させたところがあると思います。保健所、府立市民病院など」。元維新代表の橋下徹氏がツイッター(2020年4月)で「見直し」をお願いし、「何をいまさら」と波紋を呼びました。

 日本共産党は検査の拡充とともに医療・保健所体制の抜本的な強化を要求してきました。維新は住吉市民病院を廃止するなど医療機関の統廃合を進め、コロナ患者治療の中心となる急性期病床を、国の「地域医療構想」における過剰病床だとして229床も削減。21年度も426病床を削減、502床を回復期病床に転換しようとしています。自民党府政時代に大幅に削減された保健所体制(大阪市はひとつ)を立て直そうとせず、保健師・職員は慢性的な過労状態に追い込まれ、電話相談に応じきれず、感染者の入力作業すら追い付かない状態になりました。「自宅療養」という名の自宅放置状態が多発し、十分な医療を受けられないまま自宅で死亡する事例が相次ぎました。

 オミクロン株の感染急拡大は沖縄では米軍由来でした。米軍基地のない大阪府で感染が急拡大したのはなぜか。「大阪いらっしゃいキャンペーン」を延長し対象地域を近隣府県にまで拡大するなど「経済を回す」ことを優先したことが一因ではないかと指摘されています。

■大阪府は急性期病床を229床削減(2020年度)

高槻赤十字病院(高槻市) 45床
大阪府済生会富田林病院(富田林市) 40床
道仁会道仁病院(寝屋川市) 7床
淳康会堺近森病院(堺市) 12床
医真会八尾リハビリテーション病院(八尾市) 60床※
愛和会新世病院(枚方市) 16床※
敬任会南河内おか病院(河内長野市) 28床※
尽生会聖和病院(大阪市) 21床※
 ※は回復期病床に転換

カジノ頼みの「成長戦略」

会場の土壌対策790億円

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(写真)市議会開会日に7万10 28人分の署名を提出するカジノに反対する団体の人たち=10日、大阪市役所前

 元気な大阪は府民の願いですが、維新府・市政はカジノ頼みの「成長戦略」に固執しています。

 人の不幸のうえに成り立つのがカジノ。統合型リゾート(IR)の収益見込みの8割はカジノです。世論調査では常にカジノの大阪誘致に反対が多数を占めています。

 維新は「いまどき1兆円も投資するところはありますか」とカジノ産業の投資による経済効果を強調し「カジノに税金は一切使わない」(松井一郎大阪市長)と言ってきました。カジノによるギャンブル依存症などマイナス効果に加え、ここへきて財政リスクが急浮上しています。会場予定地の人工島・夢洲(ゆめしま)の汚染土壌・液状化対策に約790億円かかると大阪市が発表しました。市負担です。万博跡地利用のためにさらに約790億円の土壌対策費がかかると試算しています。

 人の不幸の量産のためにいくら注ぎ込むことになるかわかりません。日本共産党は、カジノ誘致ストップの共同を幅広くよびかけ。カジノ頼みではない大阪の成長を提案しています。

ターゲットは日本人

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 桜田照雄さん(阪南大学教授)の話 IRは海外から投資と富裕層を呼び込むと宣伝されてきましたが、事業計画が明らかになって、大阪IRは日本人による日本人のための日本人のカジノだということがはっきりしました。

 1兆800億円の投資というものの、米カジノ業者のMGMが出すのは2120億円。残りは日本の企業です。6400台ものゲーム機が24時間、365日稼働。ターゲットは日本人です。

 会場の夢洲も問題です。もともとどんな有害物質が埋められているかわからず、軟弱な地盤。商業地として大きな施設を建てることなど想定されていなかった埋め立て地です。それを用途地域変更したこと自体がおかしい。土壌汚染・液状化対策にいくらかかるかわからない状況です。

 こんな計画を維新が議会の議決だけで押し切っていいはずがありません。

「身を切る」改革

死票生む1人区 36に増

 自公政治のもとで税金が庶民の生活に使われている実感が持てないなか、「増税ではなく、改革で財源を生み出す」という維新の主張は魅力的に聞こえます。しかし、維新のいう「身を切る改革」の実態はどうでしょうか。

 維新の自慢のひとつは「退職金ゼロ」。松井氏は知事時代に「退職金をゼロにする」と打ち出しましたが、それ以上の給与値上げをし、知事の受け取りを差し引きプラスにしました。

 維新のもうひとつの売り物は議員定数の削減です。府議会の定数を109から88に削減。さらに「人口当たりの議員数比で全国最小値を実現」するとして79に削減する案を2月議会に提案しようとしています。

 この案だと1票の格差は現在の最大2・15倍から最大2・19倍に拡大し、多数の死票を生む1人区は現在の31(全53選挙区の58%)から36に増加します。

 日本共産党府議団は、多様な民意を反映するため、総定数はいまのままにし、いくつかの選挙区を合区することで、1票の格差を最大1・95倍に縮小し、1人区を8(全31選挙区の26%)に減少させることを提案しています。

 維新は「身を切る改革」を叫びながら政党助成金(税金)は受け取り続けています。日本維新の会の収入の実に約8割は政党助成金です。日本共産党は、支持しない政党にも強制的に寄付させられる政党助成金は「思想・信条の自由」「政党支持の自由」をうたう憲法に違反するとして受け取りを拒否。政党助成法廃止法案を参院に提出しました。

女性や多様な声 届きにくく

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 石田法子さん(弁護士)の話 いまでも女性の議員は少なく、ジェンダーギャップ指数をみても、日本における女性の政治参加は世界的に遅れています。フランスのように、「パリテ(男女同数)法」で、国と地方のほぼすべての選挙で政党の候補者を男女同数と義務付けている国もあります。

 遅れているうえに、大阪府議会の総定数を減らし、1人区を増やしていけば、女性はますます当選しづらくなります。死票も増えます。女性の声が議会に届きにくくなるだけではありません。多様な民意が議会に届きにくくなります。

 働かない議員はいりませんが、多様な民意を反映し、ちゃんと働いてくれる議員は「無駄」などではありません。「税金の無駄を省く」というのであれば、もっとメスをいれるべきことがあるのではないですかね。


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