2022年2月3日(木)
主張
「起訴相当」議決
河井事件の責任追及をさらに
2019年の参院選広島選挙区の大型買収事件で、河井克行元法相らから現金を受領した自民党県議ら100人が不起訴になったことに対し、検察審査会は35人を「起訴相当」、46人を「不起訴不当」と議決しました。議決を受け検察は再捜査します。公職選挙法は買収について金を配った側も受け取った側も罪に問うことを定めています。元法相側が起訴され有罪になったのに、金をもらった側が免罪されていることに批判が上がっていました。受領側の刑事責任も明確にし、事件の全容を解明することが急がれます。
渡す側も受け取った側も
広島選挙区の大型買収事件は、元法相と妻・案里氏が、地方議員、自治体首長らに計約2870万円の現金を提供し、候補者・案里氏への投票や票の取りまとめなどを依頼したというものです。
元法相と当選した案里氏は逮捕・起訴され、有罪が確定しました。案里氏は当選無効になり、元法相は衆院議員を辞職しました。しかし、事件の背景などについて2人とも国民にまともに説明していません。
検察は、受領した側全員を不起訴にしました。公選法違反事件では、1万円以下の被買収でも略式起訴されたケースが多くあります。河井事件では、受領側100人の中に100万円以上受け取った議員もいます。それにもかかわらず、不問にした検察の決定はあまりに異常でした。
市民団体の申し立てを受けた検察審査会が、81人について「起訴相当」「不起訴不当」と議決したのは、当然です。検察審の議決は、事件を主導した河井夫妻の責任が「最も重い」としつつ、「一方を処罰して、もう一方の受領者らを全く処罰しないという結論は、金員の受領が重大な違法行為であることを見失わせるおそれがある」と指摘しています。
さらに議決は、公選法は憲法の三大原則の一つである国民主権を守るための重要な法律であり、同法違反行為を「軽視するべきではない」と強調しました。金を受け取った地方議員や首長で辞職したのは少数で、返金しない議員もいます。受領側は刑事責任にとどまらず、政治的道義的責任も厳しく追及されなければなりません。
買収の原資をめぐる疑惑も未解明です。河井陣営には自民党本部から、他の自民党候補とは桁違いの1億5000万円の資金が提供されました。うち8割は政党助成金です。自民党本部は買収との関係を否定しますが、それを裏付ける証拠は示していません。
「安倍さん(安倍晋三首相)から」「二階(俊博)幹事長(当時)から」と言われ現金を渡されたと証言した議員も複数います。あいまいにはできません。
1億5千万円の解明を
案里氏は当時の安倍首相や菅義偉官房長官らが選挙に担ぎ出したといわれます。両氏は選挙中も案里氏に熱心にテコ入れしました。安倍、菅、二階の各氏は国民に全て明らかにすべきです。
広島県に選挙区がある岸田文雄首相は検察審の議決に「コメントを控える」とし、党本部からの資金提供も「党からすでに説明がなされたと承知している」と再調査を拒否しました。国民の疑問に答えない姿勢は重大です。これでは政治の信頼は回復できません。