2022年2月2日(水)
佐渡金山の世界遺産推薦を閣議了解
歴史の事実に向き合い誤り認めよ
志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は1日、国会内での記者会見で、政府が同日の閣議で「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の世界文化遺産への推薦を了解したことへの受け止めを問われ、「世界遺産に推薦登録する以上は、戦時の朝鮮人労働者の強制労働の事実を認めるべきだ」と述べました。また、この問題に関わって「歴史戦をたたかえ」などと叫ぶ動きがあるとして「根本的に間違った議論だ」と批判しました。
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志位氏は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)や国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の原則に照らして、「世界遺産の推薦登録にあたっては、過去の歴史の一部分だけでなく、負の歴史も含めて、歴史全体の文脈の中で位置付けられるべきだ」と指摘しました。
「戦時に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われていたのは歴史的事実であり、しっかり認めることが大事だ」と述べ、新潟県が編さんした『新潟県史』(1988年)や旧相川町が編さんした『相川の歴史』(95年)という二つの公文書に強制労働の実態が克明に記されていることを強調しました。
『新潟県史』では「昭和十四(一九三九)年に始まった労務動員計画は、名称こそ『募集』『官斡旋(あっせん)』『徴用』と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」と強制連行を認め、労働条件について「賃金は『内地人同様』とうたわれているが、両者を職種別に見るなら、その悪平等が判然とする」と明記されていると指摘。朝鮮人が「圧倒的に多数配属されていたのは、削岩と運搬部門であった」との記述を示し、「坑内労働という非常に危険で劣悪な条件下で働かせていたことが書かれている」と語りました。
また、『相川の歴史』でも朝鮮人の作業職種が、削岩、支柱、運搬などの「主として坑内労働に多くみられる」「労働条件の劣る坑内の採掘はより多く朝鮮人が受け持っていた」と詳細に記述されていると指摘しました。
志位氏は「この二つの公文書から、強制動員、強制労働の事実は動かせない」として、「この機会に歴史に正面から向き合い、誤りを認めていく必要がある」と述べました。
歴史を“戦場”にしてはいけない
その上で志位氏は、この問題にかかわって韓国側の主張などに対して「歴史戦をたたかえ」と叫ぶ動きがあると指摘。安倍晋三元首相がタブロイド紙のインタビューで、韓国政府が強制労働の被害などを主張していることに対して「いまこそ、新たな『歴史戦チーム』を立ち上げ、日本の名誉と誇りを守り抜いてほしい」と主張していることを、「これは根本的に間違った議論だ。歴史は戦争ではなく、事実が何より大切であり、事実に正面から向き合うことが必要だ。歴史を“戦場”にしてはいけない」と批判しました。
さらに、世界遺産への登録のために、岸田文雄首相が官邸内に省庁横断型の作業部会を設置する動きが報じられていること、この動きを、NHKが「歴史戦チーム 政権の歴史認識に基づき 事実集めて検証進め 国際社会の理解得る目的」などと報じたことに言及。「『政権の歴史認識に基づき事実を集め』などということは、根本的に間違っている。『政権の歴史認識』が先にあり、それにあう事実だけを集めるということは、歴史の改ざん、偽造をしていくことになる。歴史の事実に向き合い、誤りを認めていくことが大事だ」と述べました。
「こういうことを安倍元首相が号令をかけ、岸田政権が従うのは恥ずかしいことであり、NHKがこうやって報じることは、公共放送のあり方として大きな問題があると強い危惧を覚える」と表明しました。