2022年1月29日(土)
解説
佐渡金山 世界遺産推薦へ
登録推薦に値する 歴史的事実認めよ
佐渡金山は世界遺産への登録推薦に値するものです。日本政府はその際、戦時中の朝鮮人強制労働の事実を認める必要があります。
自民党内には「韓国政府が朝鮮人の強制労働現場である佐渡金山推薦を批判したが、(推薦は)鎖国下の江戸時代の手掘りの伝統手工業遺産に対するものであり、批判は当たらない」(高市早苗政調会長の23日の講演)などという意見があります。
しかし世界遺産とは「人類の知的・精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくる」というユネスコの理念に基づくもので、「より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならない」(「文化遺産の解説及び展示に関するイコモス憲章」)という原則に立たなければなりません。
アジア・太平洋戦争の末期に、佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われたのは歴史的な事実です。新潟県が編さんした『新潟県史 通史編8 近代3』には「強制連行された朝鮮人」という項で、日本での総力戦体制下の労務動員計画は、「朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」と指摘しています。
日本政府は、長崎の端島(通称・軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録(2015年)に際して、戦時の朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と表明していました。問題は日本がそれを実行していないことです。
21年、第44回ユネスコ世界遺産委員会は日本に「強い遺憾の意」を示し、当時の日本の徴用政策や強制労働の状態が理解できる措置を講じること、犠牲者を記憶するための適切な措置を行うことなどを求める決議を行いました。にもかかわらず、日本政府はいまだに実行していません。
日本政府はこうした態度をあらため、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認め、“国際公約”を果たすべきです。
(若林明)