2022年1月23日(日)
岸田首相 財界応援・米国いいなり政治そのもの
共産党の衆参代表質問で浮き彫り
核心ついた志位委員長質問
財界応援政治、アメリカ言いなり政治そのものではないか――。日本共産党の志位和夫委員長、小池晃書記局長の衆参本会議代表質問(20、21両日)は、自民党政治の害悪の根本をつき、その転換を迫りました。岸田文雄首相とのやりとりから浮き彫りになったものは―。衆院論戦を中心にふり返ってみました。
新自由主義からの転換
志位氏「『人件費抑制で収益確保の経営』応援したのは歴代自民党政権」
岸田首相 根拠示さず「指摘は当たらない」
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志位、小池両氏は、新自由主義からの転換について岸田首相を追及しました。
「新自由主義の『自由』とは、誰にとっての『自由』だと認識しているか」―
志位氏は、岸田首相が施政方針で「新自由主義的な考え方が生んだ、さまざまな弊害を乗り越え」ると述べたことに、こう切り込みました。「それは国民にとっての『自由』ではなく、大企業のもうけの『自由』だと考える。そのために邪魔になるものはすべて取り払う。国民には『自己責任』を押し付け、『弱肉強食』を強いる。ここに新自由主義の本質がある」
しかし、岸田首相は「新自由主義は、市場や競争に任せればすべてうまくいくという考え方だ」と一般論を語るだけで、「誰にとっての『自由』か」は一切語らぬまま。
では岸田首相は、新自由主義が日本にもたらした「さまざまな弊害」をどう認識しているのか―。志位氏は、日本社会を人々に「自己責任」を押し付ける“冷たい社会”にしただけでなく、“強い経済”とのうたい文句とは反対に「賃金が上がらない国」「成長できない国」「競争力の弱い国」になった事実を指摘し、「新自由主義が、日本経済を“もろく弱い経済”にした事実を認めるか」とただしました。
ここでも岸田首相は「需要が低迷し、デフレが加速をし、競争力も低下する悪循環だった」と語りながら、“もろく弱い経済”にしたことへの認識は一切答えませんでした。
いったい、日本経済をここまで“もろく弱い経済”にした責任はどこにあるか。志位氏は、大企業の利益を最大にするために、財界の要求にこたえて人件費削減を応援してきた歴代自民党政権に重大な責任があるのではないかと告発しますが、岸田首相はこれにも正面から答えず。
志位氏は、「使い捨て」労働をまん延させた労働法制の規制緩和、企業の社会保険料負担抑制・削減という財界要求にこたえた社会保障費の連続削減、大企業・富裕層への減税と一体にした消費税の連続増税―この3本柱で家計消費を冷え込ませたと指摘。「『人件費の抑制によってわずかな収益を確保するという経営』を応援してきたのが歴代自民党政権ではないか。こうした財界応援政治と決別し、転換する意思はあるか」と追及しました。
岸田首相は、志位氏の具体的な質問には一切答えなかったにもかかわらず、何ら根拠も示さずに「財界応援政治との指摘は全く当たらない」と一言述べるだけ。財界応援政治にどっぷりつかりながら、その自覚も反省もない岸田首相の政治姿勢が明らかになりました。
参院では、小池氏が新自由主義が生んだ弊害にかかわって、年金削減問題や、農林漁業と農村が疲弊している問題を追及し、その転換を迫りました。
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脱炭素 男女格差
かみあった答弁も
一方で、岸田首相が志位氏の指摘を認めざるを得ず、岸田政権が抱える矛盾が表れた一幕もありました。
志位氏が“やさしく強い経済”への大改革を提案した部分での議論です。志位氏は(1)「賃金の上がる国」への転換(2)社会保障拡充への転換(3)富裕層と大企業に応分の負担を求め消費税を減税(4)気候危機打開(5)ジェンダー平等―の五つを提案しました。
この中で志位氏は「気候危機打開の本気の取り組みを」と主張。火力発電の偏重が是正されない場合、製造時に二酸化炭素排出の多い日本産自動車の輸出ができなくなり、約100万人の雇用が失われ、経済損失は26兆円に及ぶとの日本自動車工業会の訴えを紹介し、「この警告をどう受け止めるか」と迫りました。
岸田首相は「諸外国が製造プロセスの脱炭素化の状況によって国際調整措置を講ずる可能性が否定できない状況にあり、産業界の危機感を共有している」と答弁しました。
一方で石炭火力発電にしがみつく姿勢は変わらず。「危機感を共有」するのであれば石炭火発からの撤退の決断が求められます。
男女賃金格差の是正では「一歩前進」の前向きな答弁も。志位氏は、12年連続でジェンダー平等1位のアイスランドの首相が、男女同一賃金の証明を義務付けるなどの取り組みで経済を強くする「副産物」が生まれたと述べたことを紹介。「日本も学び、年収240万円もの格差解消にむけ企業に実態を公表することを義務づけるべきだ」と求めました。
岸田首相は「(男女賃金格差の)是正に向けて、有価証券報告書の開示項目にするなど、企業の開示ルールのあり方を具体的に検討する」と述べました。男女賃金格差の是正へ、この間の市民の運動や日本共産党のこれまでの追及が一歩前に動かした答弁です。
「敵基地攻撃」、平和外交
志位氏「安倍元首相の『打撃力』拒否できるか」
岸田首相 「コメントは控える」と否定せず
志位氏は、「アメリカいいなり」政治の問題点をさまざまな角度からただしました。
米中対立が強まるもとで「日本の進路が問われる」と語った志位氏は、中国の覇権主義には国連憲章と国際法に基づいた冷静な外交批判が大切だと指摘。岸田首相が敵基地攻撃能力の保有に踏み出していることは重大だと強調しました。
そこで志位氏は、安倍晋三元首相が昨年11月の講演で「敵基地攻撃能力に限定せず、抑止力として、相手をせん滅するような打撃力を持たなければ日米同盟は成り立たない」という趣旨の発言をしたと指摘。「戦争放棄をうたう憲法とは相いれない」と批判し、「安倍元首相が主張する『打撃力』という議論を拒否できるか」「敵基地攻撃能力とは、ここに行きつくのではないか」と迫りました。
岸田首相は「あらゆる選択肢を排除せず」と開き直りつつ、「全面戦争を行う軍事力を検討するものではない」などと弁明。安倍元首相の発言については「コメントは控える」と述べて、否定しませんでした。
その上で志位氏は、東アジアを平和と協力の地域にしていくには、紛争の平和的解決や共存の道を追求する外交努力が求められると主張。ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議では東アジア規模の友好協力条約が提唱されたことにふれ、「政府がやるべきは、東アジアサミット(EAS)という枠組みを活用・発展させて、憲法9条を生かした平和外交だ」と提案しました。岸田首相は「EASは重要な会議だ。今後もしっかり活用していく」と言わざるを得ませんでした。EASの活用・発展を説く志位氏の質問には自民党席から激しい野次が。政権党の劣化した姿を示しました。
本土復帰50年を迎える沖縄県の辺野古新基地建設ではどうか。志位氏は、日米両政府が1996年に普天間基地の全面返還に合意したのは、米兵による少女暴行事件に対する県民の怒りに押されたものだと指摘。同時に、普天間返還の代わりに新基地を県内に造ることが条件とされた問題を告発しました。
志位氏は「少女の人権を奪っておいて、普天間を返してほしければ新しい基地を造ってよこせ。こんな理不尽な要求を県民が受け入れるはずはない」と追及。岸田首相は県民の願いを無視して、「辺野古移設が唯一の解決策だ。この方針に基づき着実に工事を進めていく」と強弁しました。まさに「米国の下僕に成り下がった情けない答弁」(志位氏)でした。
岸田政権の異常な対米従属の姿勢は、新型コロナウイルスのオミクロン株への対応でもあらわになりました。志位、小池両氏は、沖縄県をはじめとする米軍基地が水際対策の「大穴」になっていると指摘。志位氏は「この問題の根本には、米軍に治外法権的な特権を保障している日米協定がある」と批判し、ドイツなどを例に日本だけが検疫に関与できていないと厳しく追及しました。
ここでも岸田首相は「他国と比べて米軍に特別な扱いをしているという指摘はあたらない」と答弁。異常な「アメリカいいなり」に自覚がないことをあらわにしました。
参院で小池氏は、核兵器禁止条約に背く岸田首相の姿勢をただし、核禁条約に参加し、核兵器国に核廃絶を迫ることこそ被爆地出身の首相としての責務だと強調しました。