2022年1月17日(月)
主張
農業・農山村の再生
効率優先政策からの転換こそ
2年に及ぶ新型コロナ危機は、国民の命や暮らし、環境の保全などを置き去りにして経済効率を優先する日本社会のもろさを明らかにしました。食と農業の危機的事態もその一つです。それは社会の持続可能性を土台から脅かしています。農業と農山村をどう再生するのか。2022年の国政に求められる待ったなしの課題です。
自公農政が危機を深刻化
2020年の日本の食料自給率は37%と過去最低を記録しました。主要国では際立った低さです。国内での畜産に欠かせない飼料の75%は輸入です。化学肥料原料の大半も国外からです。野菜の種の9割、ひなを産む種鶏の90%以上も海外産です。農業生産も外国人なしには維持できない産地が少なくありません。
食の海外依存は、地球環境の悪化や途上国の人口増加で世界の食料需給が不安定化する中、国民の生存基盤の根本を揺るがしています。コロナ危機で世界の食料生産や貿易、物流に大きな混乱が生まれたのは、重大な警告です。
政府統計である20年農林業センサスは、農業の担い手不足と高齢化に拍車がかかり、農地の減少と荒廃、農山村の衰退が進んでいる姿を浮き彫りにしました。
歴代自民党政権が、食料は安い外国から買えばいいとして農産物の輸入自由化を一貫して推進し、国内農業をつぶしてきた結果です。環太平洋連携協定(TPP)など巨大な経済圏での貿易自由化を強行し、農業の大規模化・企業化と、家族農業の切り捨てを進めた安倍晋三政権以降の農政は、危機をいっそう深刻化させました。
岸田文雄政権は一定の見直しを口にしますが、実際にやっているのは旧来の路線の延長線上での新たな農業つぶしです。
最悪の表れが、昨年来の米価の大暴落への対応です。「米価は市場で決まる」との立場に固執し、生産費を大きく下回る低米価を放置しています。農家には史上最大の減産を強いながら、ミニマムアクセス米輸入は聖域扱いです。年末には、条件不利地の農業を一気に衰退させかねない水田活用交付金の大幅見直しを打ち出しました。
このもとで、政府が育成するとしてきた大規模経営や集落営農からも「もう続けられない」と悲鳴が上がっています。農業の生産基盤のさらなる弱体化、食料自給率の一層の低下は必至です。
自公政権は昨年、農林水産分野の環境への負荷軽減を掲げた「みどりの食料システム戦略」を打ち出しました。脱炭素や有機農業の拡大などを目標にします。しかし、強調されるのはAI、ロボットなど先端技術の開発や普及です。農業所得の多くが農機メーカー・IT企業のもうけに置き換わり、小規模農家が切り捨てられかねません。田畑に農民の姿が見えない農村にしてはなりません。
人にも環境にも優しく
世界は地球規模の環境破壊やコロナ危機を踏まえ、人と環境に優しい農政への転換を進めています。国連が呼び掛けた「家族農業の10年」の取り組みがいよいよ重要です。日本も、食料の外国依存を改め、価格保障や所得補償の充実などで多様な家族経営が成り立ち、農村で暮らせる農政に真剣に踏みだす時です。今夏の参院選で自公政権の無責任な農政に厳しい審判を下すことは、その第一歩です。