2022年1月6日(木)
主張
コロナ禍と住まい
政府は公的支援の責任果たせ
新型コロナ感染拡大の影響による失業や収入減で家賃や住宅ローンの支払い困難に陥り、住まいを失う人が後を絶ちません。長期化するコロナ禍で仕事につけず住むところもないまま越年した人も多く、問題は深刻化しています。
コロナ禍は、国民に「住まいの権利」を保障していない日本の住宅政策の問題点を浮き彫りにしました。生活困窮者に住まいを確保する緊急の対策をいっそう強めるとともに、安心して住み続けられる住宅を提供する政策への転換が必要です。
恒久的な家賃補助制度を
生活困窮者の家賃を自治体が補助する住居確保給付金の利用がコロナ禍で激増しました。2019年度の新規支給件数3972件に対し、20年度は13万4946件と約34倍です。支給対象拡大を求める運動によって要件が緩和された影響もありますが、コロナ禍が賃貸に住む多くの人を直撃していることを示しています。
同給付金支給は原則3カ月です。コロナ対応の緊急措置として延長可能ですが、最長15カ月です。全国借地借家人組合は昨年末、国会で集会を開き、「住まいの危機打開のために恒久的な家賃補助制度の創設は不可欠だ」と訴えました。政府は切実な声を受け止め、抜本的な改善に踏み切るべきです。
所得の低い人などに住居を提供する制度も機能していません。政府は17年に低額所得者、被災者、高齢者、障害者などの入居を断らない賃貸住宅を供給する「住宅セーフティネット制度」を開始しました。大家が賃貸住宅を自治体に登録し、家賃低廉化(最大月4万円を大家に補助)を行う仕組みです。しかし制度開始後、低廉化対象に登録された住宅は全国で4000戸程度にとどまり、20年度の低廉化の補助実績は全国で17自治体のわずか208戸です。自治体負担の重さが普及を妨げており、その軽減などが不可欠です。
政府は、公的住宅の供給も後退させています。公営、UR、公社などの公的賃貸住宅は一部の建て替えを除き新規供給を行っていないために大幅に減少しました。03年~18年の間に、公営住宅は218万3000戸から192万2000戸に、URと公社の住宅は93万6000戸から74万7000戸へとそれぞれ減りました。公的賃貸住宅であるにもかかわらず、家賃を「近傍同種家賃」として高額化を可能にしたことも重大です。
政府の住宅政策は一貫して持ち家の建設・取得の支援に偏重しています。例えば19年の消費税増税の際、2000億円以上の予算を計上し導入したのは「すまい給付金」「次世代住宅ポイント」という持ち家促進策でした。22年度も住宅ローン減税は重視されますが、低収入に苦しむ人への住まいの安定的な確保は後回しです。
大本から切り替える時
自己責任や自助を強調する新自由主義が住宅政策に持ち込まれて、ゆがみを拡大しています。いまこそ居住の権利保障を基本にした政策にしなければなりません。
岸田文雄政権は持ち家政策に固執する方針を改めず、コロナであらわになった住宅政策の課題を打開する姿勢がありません。欧州諸国では公共的な住宅を再評価し、供給を増やす動きがでています。日本の住宅政策も大本から切り替えることが求められます。