2022年1月3日(月)
主張
核兵器のない世界
逆流乗り越え前進を遂げよう
史上初めて核兵器を違法化した核兵器禁止条約の発効(2021年1月22日)から間もなく1年です。昨年の国連総会では条約発効を歓迎する発言が相次ぎ、128カ国の賛成で条約への参加を求める決議が採択されました。批准国は増加し、「核兵器のない世界」をめざす流れは大きく発展しています。一方、核保有国は核戦力の増強を進め、禁止条約への敵対姿勢を強めています。22年を、逆流を乗り越えて核兵器廃絶という人類の悲願に向けて前進する年にすることが求められます。
保有国は義務と合意守れ
多くの国が核兵器廃絶に向け努力する中で、「核抑止力」に固執する保有国は、禁止条約への非難を繰り返しています。他の問題では対立する米英仏ロ中の核五大国は国連総会では一致して禁止条約反対の共同声明を発表しました。
バイデン米大統領は、トランプ前政権の核兵器開発計画を引き継ぎ、核戦力の維持と質的強化を図っています。ロシアのプーチン政権も北大西洋条約機構(NATO)に対抗し、核兵器を先制使用する方針を明らかにしています。
中国は核五大国で唯一、核弾頭を増加させ、新たな弾道ミサイルも開発中です。核兵器の保有上限を引き上げたイギリスや自衛の「核抑止力」を強調するフランス、さらに北朝鮮の核保有やインドとパキスタンの対立など、地球は核使用の危機を抱え続けています。
それだけに今年に開催予定の核不拡散条約(NPT)再検討会議は重要な意義をもっています。同条約第6条は核軍備縮小撤廃を義務づけています。これまでの再検討会議では「自国核兵器の完全廃絶にいたるプロセスへのすべての核保有国の参加」「(核兵器)完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」(00年最終文書)や、「核兵器のない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、すべての加盟国が特別な努力を払うこと」(10年最終文書)を全会一致で確認してきました。核兵器国には、これらの合意を再確認し誠実に履行することが求められています。
NPTは五大国だけに核保有を認め、それ以外の国に保有を禁じる史上類を見ない差別的な条約です。国際社会が同条約を認めたのは、核軍備縮小撤廃を義務づけた6条があるからです。保有国がこの義務や合意に背き続けるなら、NPT体制そのものが根底から揺らぎかねません。
日本共産党の志位和夫委員長は12月27日、NPT再検討会議に(1)被爆者や核実験被害者の声に耳を傾け、核兵器の非人道性を締約国の共通認識とすること(2)条約の核軍縮義務、これまでの再検討会議の合意の再確認、具体化、実行(3)非核地帯の創設や核兵器の先制不使用などの部分的措置の前進―を求める要請文を送りました。
3月の締約国会議に向け
岸田文雄政権は国連総会で、アメリカなど核保有国の意をくみ、NPT再検討会議の合意を薄め、ゆがめる決議案を提出し、非核保有国から批判を浴びました。唯一の戦争被爆国としてあるまじき姿です。3月には禁止条約の第1回締約国会議が開かれます。日本政府に核兵器廃絶の役割を果たすことを迫るとともに、国際的な逆流を打ち破る世論と運動を飛躍させることが期待されます。