2021年12月22日(水)
主張
CO2削減と日本
政府は目標引き上げに着手を
英国グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が気候危機を回避するための努力の強化で合意したのを受け、日本政府に二酸化炭素(CO2)排出削減目標の引き上げを求める声が環境NGOから上がっています。COP26ではCO2排出量が格段に多い石炭火力発電に固執する日本政府に国際的な批判が集まりました。にもかかわらず、岸田文雄政権は政策を根本から改めようとしません。日本は世界第5位のCO2排出国です。削減目標を引き上げることは、日本に課せられた責任です。
10年間の取り組み決定的
グラスゴー気候合意(11月13日)は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ「1・5度に制限する」ことを確認しました。それには温室効果ガス排出量を迅速・大幅に削減することが必要で、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするため、30年までに世界全体で45%削減(10年比)する重要性が強調されました。
事実上、世界共通目標となった1・5度以下の実現には、今後10年間の取り組みが決定的です。しかし、現在各国が国連に提出している目標では1・5度以下達成はできません。グラスゴー気候合意は「30年目標を再検討し、強化することを締約国に要請」しました。22年開催のCOP27に向けた見直しは各国に課せられた責務です。
日本の30年目標は13年比46%削減です。10年比だと41・6%減にしかならないと政府も国会答弁で認めています。世界水準からあまりにもかけ離れています。CAN―Japanなど日本のNGOは政府の気候関連政策の見直しを求める声明を発表しました。衆院予算委員会(15日)で日本共産党の宮本徹議員は削減目標引き上げを求めましたが、岸田首相は「日本の事情を現実的に考えた」と引き上げに背を向けました。山口壮環境相は「各国に(削減見直しを)等しく求めていない」などと無責任な答弁に終始しました。
日本にはCO2を長期に排出してきた先進国としての大きな責任があります。排出を削減できる高い技術力と経済力も持っています。岸田政権は目標を見直し、30年に50~60%削減(10年比)することを掲げるべきです。
石炭火力発電を延命させる岸田政権の姿勢も重大です。福島県広野町で建設が進められていた石炭火力発電所が11月19日、営業運転を開始しました。さらに全国8カ所で建設中です。グラスゴー気候合意の直後に新たな石炭火力の運転が始まったことに「合意に完全に逆行する」(気候ネットワーク)と厳しい批判が出ています。一刻も早く石炭火力から撤退する政策に転換することが必要です。
エネ計画を見直すべきだ
COP26では「脱石炭」だけでなく石油などを含む「脱化石燃料」への動きも進みました。英国、米国など20カ国以上は化石燃料事業への新規の公的融資停止に合意しました。日本は参加していません。世界の流れに日本は取り残されるばかりです。
30年に電源構成の2割近くを石炭火力に依存する第6次エネルギー基本計画(10月に閣議決定)の根本的な見直しは不可欠です。省エネルギーと再生可能エネルギーの本格的な推進にかじを切ることが今こそ求められます。