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2021年12月8日(水)

政府の検査体制 後退

「モニタリング」も「社会検査」も休止

首相「抜本的拡充」に逆行

 政府が新型コロナウイルスへの対応における検査体制について、第5波のあった今夏以降、国の主導で行っている検査や、自治体に要請していた検査などを後退させていることがわかりました。岸田文雄首相が総裁選以降、「無料検査を抜本的に拡充する」とうたう言葉とは、逆行する動きです。(田中智己)


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(写真)PCR検査で唾液を採取する男性

 内閣官房が取り組んでいた、感染拡大の予兆を早期に発見するための「モニタリング検査」は撤退。高齢者施設などでの定期的な検査を実施する「社会的検査」も各自治体に計画の策定や実施の要請を終了しました。

 内閣官房の担当者によると、モニタリング検査は今年7月ごろに電通テックと契約しましたが、契約終了時期に伴い、用意した検査キットも上限に達するため終了するといいます。

 モニタリング検査は、感染リスクの高い繁華街や駅などで無症状者を対象にPCR検査を実施していました。感染拡大の予兆をつかむための対策とはなっていないとの指摘もある一方、抜本的な拡充をすれば十分に有効な検査となり得ると評価する専門家の声もありました。

 社会的検査は政府が緊急事態宣言解除を決定した9月28日、新型コロナ対策の基本的対処方針を変更し、高齢者施設などでの検査について、「(中略)(自治体に対し)集中的実施計画に基づく検査を定期的に実施するよう求め~(後略)」とする文言を削除。社会的検査の計画策定や実施について、自治体への要請を終了しました。

自治体に影響

 この対処方針の変更に基づき、自治体にも休止の動きが出始めています。大阪府は11月末に高齢者施設などに対する定期的なPCR検査を休止しています。府は、「今後は有症状者や陽性者への対策に重点をおく」などとしており、再開の検討については、「感染が拡大し、緊急事態宣言が発令されたときには検討する可能性はある」と消極的な姿勢です。

 岸田首相は所信表明演説で、ふたたび「無料検査の拡充」を語り、補正予算案に3200億円を計上したとアピールしました。ただし、実際には健康上の理由によるワクチン未接種の人を対象に限定。感染拡大時には、無症状でも無料検査を受けられるようにするとしましたが、感染が拡大する前の感染防止のための検査ではなく、後手の対応にとどまっています。

 予算案に計上した3200億円は、地方創生臨時交付金です。同交付金は、各自治体による感染拡大防止やコロナ禍の影響を受けている地域経済、住民生活を支援するために交付されるものです。政府が抜本的に拡充することをうたいながら、検査体制の拡充は地方自治体に丸投げというのが実態です。

医師から批判

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(写真)徳田安春医師

 群星(むりぶし)沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師は、「政府の検査体制は後退している」と指摘します。岸田首相が掲げる「無料検査」については、「基本的にワクチン未接種の人が対象だ。ワクチンを打ったからといってブレークスルー感染などがある以上、接種済みの人にも検査は不要にはならない。政府発表では、まるで拡充しているように見えることも問題だ」と厳しく批判します。


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