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2021年11月19日(金)

主張

設置基準の制定

今こそ特別支援学校増やそう

 文部科学省はこのほど、比較的障害の重い子どもたちが通う特別支援学校の設置基準を制定しました。10年以上にわたり制定を求めてきた保護者や教職員の粘り強い運動が障害児教育の新たなページを開きました。

保護者・教員の運動実る

 設置基準は学校を設置するための「最低限の基準」です。幼稚園から大学まですべての学校にある設置基準が、特別支援学校にだけはありませんでした。

 その結果、特別支援学校に通う子どもは20年間で1・6倍に増えたのに学校数は1・16倍と新設がすすまず、各地で学校の過大化・過密化が進行しました。

 文科省の調査でも全国で3千超の教室が不足し、カーテンで教室を仕切り2教室として使う、図書室や特別教室を普通教室に転用する、窓がない倉庫を学習室にする―などの劣悪な教育環境が浮き彫りになりました。音楽の授業なのに小さな声で歌う、隣のクラスの声が気になり授業に集中できないなど、障害者権利条約や憲法が保障する教育を受ける権利を侵害する事態が各地で起きています。

 日本共産党は2010年に「緊急提案」を発表し、国会でも繰り返し設置基準の策定を求めてきました。19年3月の参院予算委員会での山下芳生副委員長の質問に安倍晋三首相(当時)は「現状を放置する考え方は全くない」と答弁しました。文科省内の有識者会議で設置基準策定が検討される契機となりました。

 設置基準には過大化・過密化を防ぐために関係者が求めていた児童・生徒数や通学時間の上限規定がなく、既存校を当面適用外とするなど不十分な面があるものの、現状を改善するうえで力になるものです。

 なにより文科省が、設置基準を公布した通知(9月24日)の「制定の趣旨」で「慢性的な教室不足が続いている特別支援学校の教育環境を改善する観点」を明記したことです。設置基準は最低限の基準にすぎず、さらなる水準向上に努めなければならないとしました。既存校についても「可能な限り速やかに設置基準を満たすこと」を設置自治体に要求し、21年度末までに教室不足解消に向けた「集中取組計画」を策定し、着実に実施することも求めました。

 特別支援学校の施設・設備について設置基準は「指導上、保健衛生上、安全上及び管理上適切なものでなければならない」とし、特別教室、図書室、自立活動室を「校舎に備えるべき施設」と定めました。隣のクラスの声が筒抜けのカーテン教室は「指導上」、窓がない学習室は「保健衛生上」適切とはいえません。特別教室や図書室の転用も原則認められないことになります。特別支援学校の教育環境を改善する大きな足掛かりになります。

国は補助率の引き上げを

 地域に根差した適正規模の学校となるよう、いまこそ国や自治体は特別支援学校の抜本的な新増設へと足を踏み出すべきです。新増設を促進するための国庫補助率の引き上げも必要です。

 各地ですすんでいる教室不足対策として高校の空き教室などに特別支援学校の分教室を設置するやり方では問題は解決しません。特別支援学校の新増設へ力を合わせましょう。


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